小林繁とジャイアンツに密約はあったのか

いわゆる「空白の一日」事件で、小林繁がタイガースに電撃移籍された際、小林とジャイアンツの間に密約があったのではないか、と江草さんが懸念されている。

オレが想像する密約というのは次の2点だ。「小林が巨人戦で勝てるように協力する」「5年間だけ阪神でプレーしたら引退しても良い」そしてオモテに出ない莫大な金額が裏取引として支払われたのではないかと。だから小林はそのトレードに応じたのではないかというゲスの勘ぐりを、どうしてもオレはしてしまうのである。

江草さんは、密約があったと言っているわけではなく、ついついそんなことを考えてしまう自分を恥じている、という主旨のようだが、真相はどうであろうか。

結論からいえば、そうした密約はなかったと断言してよいと思う。なぜなら、確かに小林が移籍した1979年の対ジャイアンツ8連勝が注目され、自分のエントリでもそれのみを記載したが、実は勝てたのはその年だけで、翌年からはジャイアンツにさっぱり勝てなくなってしまったからだ(1980年〜1983年で5勝15敗と大きく負け越している)。

では、なぜ一年目は勝てたのか? 小林がジャイアンツのサインを知っていたため、作戦が読めたからではないか、と僕は推測している。翌年からジャイアンツはサインをガラリと変え、小林はそれを見抜くことができなくなり(小林の優位性が失われ)、以後は実力通りの結果となった、というのが真相ではないだろうか。

また、引退後の小林は、事業に失敗して借金を負ったりして、金銭的にはうまくいっていなかった。もしジャイアンツ球団となんらかの裏取引があれば、小林も球団に相談しただろうし、そうであれば自己破産まですることはなかったのではないか。従って、将来にわたる何らかの約束事というのも考えにくい。

せいぜい、移籍に際して相場を上回るトレードマネーが支払われた程度であろう。