ホワイト・アルバムにおけるギター

ホワイト・アルバムのサウンドは、それ以前のものと比べてくらべていろいろ変化があるが、3フィンガー風のギター演奏が登場したのもそのひとつだろう。

3フィンガー奏法というのは、元の意味は3本の指を使って演奏することだが、独特のリズムがあり、普通はそのリズム・スタイルのことを指す。3本指で演奏したらすべて3フィンガーというわけではなく、逆に、3フィンガーといっても、実際には2本指で演奏したり、4本使ったりすることもある。

ホワイト・アルバム収録曲で代表的な3フィンガーといえば「Julia」であろうが、他にも「Dear Prudence」「Happiness Is a Warm Gun」の前半などでも聞ける。すべてジョンの曲だ。

ホワイト・アルバム製作前にメンバーはインドへ行っている。ビートルズとインドというのは語ると長くなるので詳しいことは割愛するが、当時インドには他のミュージシャンも何人も来ており、この時ドノヴァンから3フィンガー奏法を教わったとされている。ドノヴァンによれば、ジョン、ポール、ジョージの三人に教えたものの、マスターしたのはジョンだけだったという。

ポールの場合は、3フィンガーをマスターできなかった、あるいは、興味がなかった、というよりは、典型的な3フィンガーをマスターすることに満足せず、それをベースに独自の奏法を編み出した、といった方がいいかも知れない。そうして作ったのが、たとえば「Blackbird」なんだろう。

さらに、「Martha My Dear」のピアノは、ギターの3フィンガーをピアノに移し替えたものではないかと僕は思っている。あの独特のリズムの刻み方は、「ピアノの3フィンガー」と思えば簡単に納得できるものだ。ついでにいえばこの曲における左手のベース・ランニングは、まさにベーシストとしての発想だろう。

ジョージは真面目に瞑想していて、ギターどころではなかったのかも知れない。*1

ジョージのギターといえば、「While My Guitar Gently Weeps」について触れておく。アルバムリリース当初はこの哀愁を帯びた印象的なギターはジョージの演奏だと思われていたが、のちにジョージは次のように明かした。

あの曲の中でぼくのギターが、すばらしいブルースのフィーリングを感じさせると書かれた手紙をずいぶんもらうよ。しかし実際はぼくじゃなくってエリック・クラプトンが弾いているんだ。彼はぼくの親友でね。(「ミュージック・ライフ」1970年5〜6月号)

この時以降、エリックの演奏であることが周知となったはずなのだが、ジョージが亡くなった時の新聞記事では、各紙とも「While My Guitar Gently Weepsでは素晴らしい演奏を……」などととんでもないことを書いていたため、改めて記しておく次第。

*1:メンバーのインド行きは、様々な精神的な葛藤や行き詰まりを感じていたことから、マハリシ・ヨギの講義を受けるためだった。マハリシ・ヨギはトランセンデンタル・メディテーション超越瞑想)の創立者で、3大導師のひとりに数えられている。この滞在時にジョンとポールはギターを持参していたことを、ジョージから「作曲やギターの練習のためにわざわざインドまで来たんじゃない、不真面目だ」と怒られたという。しかし実際は、ホワイト・アルバムに収録された曲の大半はインド滞在中に作られたものである。