セ・リーグのペナントレースはいらない

なんとV9ジャイアンツ以来のセ・リーグ3連覇ということで、戦力が均衡してきた最近ではやはりこれは快挙と言っても良いでしょう。

戦力は均衡しているだろうか。

投手でいえば内海、越智とかが頑張って、打者でいえば亀井が出てきて、阿部が終盤のいいところで打って、それでもぎとった優勝だから、ジャイアンツファンにとってはそれなりに嬉しいだろう。僕だって、こうした選手の活躍は頼もしいと思う。

しかし、なんといってもグライジンガー(13勝5敗、3.35)、クルーン(1勝3敗27S、1.26)、ラミレス(.327、30本)らの存在なくして連続優勝はありえなかった。忘れたふりをしている人が多いので改めて書くが、2007年、グライジンガーとラミレスはスワローズに所属し、グライジンガーは最多勝、ラミレスは最多安打および最多打点のタイトルを獲得。クルーンベイスターズのリリーフエースとして活躍していた。

優勝したチームが(CSで負けて日本シリーズ出場がかなわなかったからといって)同一リーグの下位球団から、主力選手をまとめて引き抜いたのである。確かに違法な手段を用いたわけではない。が、そもそも日本人選手の移籍は厳しい制約があり、FAを取得するには何年もかかるが、外国人選手はなぜかそうした制約がない。ルールの制約がないからといっても、そこはいろいろな点を考慮してある程度で自重するものだが、なりふり構わず選手を集めたのだ。

スワローズは今シーズンはよくペナントを盛り上げ、現在もCS出場を懸けて奮闘中だが、ベイスターズに至っては最初から員数外。あの戦力では、クルーン一人がいたところで何も変わらなかったかも知れないが、セリーグ各球団の戦力差は明らかで、ペナントの順位もほぼその戦力通りとなっている。こんな状態を誰がいったい面白いと思っているのだろう。

ちなみに、1965年から始まったドラフト制は、チーム間の戦力の均衡化に効果を発揮したといわれる。その1965年からセではジャイアンツのV9が始まるのだが、その後はカープが初優勝して赤ヘルブームを巻き起こしたり、スワローズが初優勝して管理野球ブームを巻き起こしたり、ベイスターズが38年ぶりに優勝して放任主義が一般に広ま……ったりはしなかったけど、混戦になって、ペナントは俄然面白くなった。そして2年連続はあったが3年連続優勝はなかった。*1

しかし近年は、逆指名制度ができたり、FA期間が短縮されたり、さらに外人枠の制約が緩くなって外国人選手が増えたが、外国人選手の移籍は事実上ルールなしの状態、といった事情もあって、再び(特にセ・リーグにおいて)チーム間の戦力格差は大きくなる傾向にある。その結果が今回の3連覇だ。

この上は、ジャイアンツにはぜひとも日本一になってもらいたい。これでもし今年も日本一を逃す羽目に陥れば、オフに何が起きるかわからないからだ。もしドラゴンズのチェンが来期ジャイアンツへ移籍なんてことになったら、ペナントレースは必要なくなる。半年間ゆっくり休んで、日本シリーズだけ出てくればいい。

*1:もっともパでは、西本ブレーブスの3連覇(一年おいてさらに2連覇)、上田ブレーブスの4連覇、広岡〜森ライオンズの4連覇、一年おいて5連覇と、割と連覇が目立つ。特に1980年代から90年代の前半にかけてのライオンズの強さは圧倒的だった。が、このチームは、東尾、工藤、渡辺、郭、石毛、秋山、清原、伊東、……みな生え抜きである。長期戦略があって、新人育成がきちんとできていて、さらに戦力をうまく使いこなせる人が現場にいた、ということなんだろう。