松坂大輔の引退

7月7日、松坂大輔の引退の報が流れた。遅きに失した感はあるが、本人が納得するのにそれだけの時間が必要だったということだろう。イチローもそうだが、最近は一流選手の引き際が難しくなっている。

松坂は1999年に横浜高校を卒業してプロ入りし、一年目から大活躍。4月21日のマリーンズ戦で黒木知宏と投げ合い惜敗、試合後に「リベンジします」と宣言すると、4月27日のマリーンズ戦で再び黒木と投げ合って1-0でプロ初完封を記録。「リベンジ」が流行語になった……という話は有名だが、この時の黒木の「松坂くんは末恐ろしいというより既に恐ろしい」は名言だったと思う。ネットを探しても出てこないので、ここに記録しておく次第。

松坂は一年目から最多勝を獲得。資質ある投手が大学卒でプロ入りした場合、一年目から活躍してタイトルを総なめにするのは珍しくない(松坂と同じ年にプロ入りし、何かと比較された上原浩治は、一年目に最多勝利、最高勝率、最優秀防御率最多奪三振を獲得している)。高卒でプロ入りした場合は、桑田真澄のような伸び方が理想的だと思っている。桑田の一年目・二年目の成績:

年度 試合 勝利 敗戦 防御率
1986 15 2 1 5.14
1987 28 15 6 2.17

プロのレベル差を思い知らされるのが一年目。二年目でぐっと伸び、タイトル争いに絡んでくるような選手が一流になる(桑田は二年目で防御率のタイトルを獲得)。松坂は活躍が早過ぎて、一年目がキャリアハイにならなければよいがと余計な心配をしていたが、なんと三年連続最多勝を獲得するなど、順調に活躍を続けた。

日本でのキャリアハイは2006年だろう。17勝5敗、勝率.773、防御率2.13は、いずれもタイトルには届かなかったが、本人史上最高の数字である。その上この年は開幕前にWBCがあり、3戦3勝・防御率1.38(MVP獲得)。またポストシーズンでも1試合に投げ完封勝利を飾っている。これらをすべて足すと21勝5敗ということになる。

WBCは僕もテレビでじっくりと観戦したが、その結果、松坂は見ていてあまり楽しい投手ではないな、と思った。投球間隔が長く、四球も多い。リズムが悪いのである。対照的なのが上原浩治で、上原の投球はまさに「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」という感じで、リズミカルで引き込まれる。夜のスポーツニュースや翌朝の新聞で読む限りでは松坂はいい投手なのだが、生の松坂はあまり魅力的な投手ではないというのが僕の評価である。

高校3年生の時の夏の甲子園の決勝戦京都成章戦)は、自分にしては珍しく時間が取れて、テレビの前で観戦したのだが、眠気が襲ってきて居眠りをしてしまった。気付いたら試合が終わっていて、ノーヒットノーランだったことを知り、この歴史的場面を見逃したのかと残念に思ったことを覚えている。が、あとになって考えてみると、この時も投球が退屈だったんじゃないだろうか……

渡米後は、少なくとも数年間は大活躍だった。が、日本に戻ってきてからについては語るべきことは何もない。ホークスに三年在籍したが、二年目くらいで引退を表明すべきだった。以降は、これ以上晩節を汚してくれるなと思うばかりだった。ようやく決断できたことを褒め称えたいと思う。