- 吉田 揚子(取材・文)、佐野 絵里子(絵)「普段に生かす にほんの台所道具」(技術評論社)
- 作者: 吉田揚子,A5,佐野絵里子
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2007/10/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まな板、包丁から始まって主な台所道具の種類や選び方、使い方などの説明がある。これが第一に実用的である。日常的に台所仕事に慣れ親しんでいる人にとっては必ずしも目新しいことではないかも知れないが、それでも知らないこともある。まな板の材料は檜が最高レベルで、それ以外は値段を抑えるために安い木材を使っているのだろうと漠然と思っていたが、銀杏、柳、朴などがそれぞれ特長があるなんて知らなかった。
「作り手を訪ねる」というページがある。実際にその道具がどのように作られているのか、使い方のコツなどを作り手に語ってもらう。普段は気にも留めないが、このような記事に触れると、道具に対する興味や愛着が湧いてくる。プロジェクトXではないが、ものづくりに真摯な人の話は面白い。
その道具が歴史的にいつごろから使われるようになったのか、私たちの生活にどのように浸透してきたのか、とった記事がある。これは食という観点から日本の文化史をたどるもので、大変に興味深い。こうした情報はなかなか語られないし、探しても得られるものではない。取材・調査は大変だっただろう。
料理のレシピも割と充実している。それだけを期待して購入しても、期待外れに終わることはない。
ちょっとレトロ風のイラストが効いている。色使いが綺麗でわかりやすい。定規やスクリーントーンを使わない筆致が、手作りの「料理」というものによく合っている。佐野絵里子は漫画家として既に単行本を何冊も出しているが、こうした絵も描けるとは知らなかった。多才な人間である。
なお、吉田と佐野は、学生時代に可愛がっていた後輩である。彼女らが結婚した時は悔し涙を流したものだが、お連れ合いの方はそれぞれにいい男なので、致し方ないのである。このような、地味だが中身のある本を作られたと知った時は嬉しかったのである。ぜひとも売れてほしいのである。