自動車の運転をしながらFMをぼーっと聞いていたら「松任谷正隆のちょっと変なこと聞いてもいいですか?」とかいうコーナーになった。
僕は名前を知らないアメリカ人(流暢な日本語を話す)がこんなことを言っていた。
自分は英語しかわからず、アメリカの歌しか聞いたことがなくて、世界の文化とか全然知らなかった。日本に来て最初に覚えたのがSAY YESなんだけど、これ、すごくコードが多いですよね。アメリカにはこんな曲はほとんどない。たいていの曲が三つか四つのコードで成り立っている。だから退屈かというとそういうわけではなくて、それはそれでいい曲なんだけど。
日本は、バンドマスターとか、アレンジャーとか、要は松任谷さんのような仕事をしている人のレベルがすごく高くて、音楽をよく知っていて、そういう人がいい仕事をして曲の完成度をあげているイメージがあるんです。
これを受けた松任谷正隆が「難しい問題だね」と言ってこんな話をした。
僕はまあ、アメリカでレコーディングとかをやって、向こうのミュージシャンと一緒に演奏をする機会がよくあるんだけど、彼らとセッションをすると、自分はたいしていいパフォーマンスができたわけではないのに、なんだか自分がすごくうまくなったような、いい演奏が出来たかのように感じることがよくある。でも日本人と演奏をすると決してそうはならない。自分は自分で緻密に作り上げて、合わせていかないと、いい音楽にならない。
なんでそんなことになるのかよくわからないけど、向こうのミュージシャンというのは人を巻き込んでいく力強さというか、迫力というか、そういうのがあるよね」
これを聞いて思ったこと。
チューリップに「すべて君たちのせいさ」という丸ごとビートルズのカバー曲ばかりのアルバムがある。基本的にはオリジナルに忠実な演奏だが、「ブラックバード」は、オリジナルはポールのギターのみ(つぐみの声を模したSEは入るが)であるのに対し、チューリップ版はいろいろな楽器をふんだんに使ったリッチな構成になっている。
しかし、申し訳ないがあまり音の厚みを感じない。いろいろ重ねてはいるけれど響いてくるものがなく、ポールのギターのみの演奏の方が力強さを感じさせるのが不思議だった。
今回の話と関係あるかどうかわからないが、あれこれ飾り立てたからといってどんどん豪華になるかというと必ずしもそうではなく、シンプルな構成の方がはるかに迫って来ることはあるなあ。
ALL BECAUSE OF YOU GUYS-すべて君たちのせいさ
- アーティスト:TULIP
- 発売日: 2007/05/30
- メディア: CD