別役実亡くなる

2020年3月3日、劇作家の別役実が死去した。82歳。

今の時代、別役実と聞いてわかる人がどれだけいるだろう。「べつやくれいのお父さん」と言った方が通りがよいのではないか。

高校一年生の時に「マッチ売りの少女」を読んだ。一読ではなかなか意味が解らないが、再読して、主人公の少女はどうやら春をひさいでいるらしいこと、連れている「弟」は実は息子であるらしいことがわかり、愕然としたことを覚えている。

小学生の時に「マッチ売りの少女」のお芝居をしたことがある。貧しい少女が、つかの間の暖を取るためにマッチをもやし続け、朝になって町の人が気付いた時には笑顔で死んでいたという、悲しくも美しいあの物語である。それを売春婦の物語だと「見立て」たことに驚愕したのであるが、20歳くらいになった時に、それは作り話ではなく本当にそういう商売が(今でも)あるらしいと知ってさらに驚いた。*1

「黄色いパラソルと黒いコーモリ傘」とか「一軒の家・一本の木・一人の息子」とか「にしむくさむらい」とか思い出は尽きないがここまでにしておく。ひとつの時代が終わったなぁという気にさせられる。合掌。

(2020/3/11 記)

*1:とある青年男性向け雑誌(いわゆるエロ本)に、マッチを擦ってそれが消えるまでの間パンツを脱いでくれる風俗サービスの紹介が載っていたのを見たのだ。