谷亮子ついに引退

16日の朝刊は、スポーツ紙はもちろん、一般紙もトップに谷の引退報道を載せた。20年世界のトップクラスの成績を維持し続けた女王が、ついに引退を表明した。

2012年のロンドン五輪で金を目指すと公言していたが、11月の全日本の出場の締め切りが15日で、全柔連からはこれに出場しなければ強化選手から外すと言われていたため、出場か引退かぎりぎりまで迷った挙句、引退を取った……ということのように見える。理由は練習時間が十分に取れなかったため。新聞のコメント欄には、政治家をやめて選手一本に絞った方が良かった、などの意見も散見した。

しかし、出産などで試合から遠のいている間に若手が台頭。9月の世界選手権終了後、強化指定ランクは「ナショナル」から「シニア」に降格させられている。世界ランキングで上位に入らないとオリンピックは出場できないが、「シニア」ではポイントの高い国際試合へは出場できず、この時点で実質的にオリンピックへの道は閉ざされていたのだ。

もっとも谷の場合、仮に全日本で優勝かそれに近い成績をあげた場合、過去の実績も考慮され再び「ナショナル」に昇格になったかも知れない。本人も、そうした優遇措置に対する期待はあったのではないか。

とはいえ、いくら練習が十分にできたとしても、現在の谷の力では、福見友子浅見八瑠奈山岸絵美には勝てないだろう。となると最高でも4位(準決勝敗退)、組合せによっては、下手をしたら一回戦負けもあり得る。さすがに競技人生の最後にそのようなみじめな姿を晒すわけにはいかず、今回の辞退となったのだろう。

現役選手にこだわるなら、成績は度外視して出場してほしかった気もする。名を知られていない若手にあっさり負けるかも知れぬ。しかし、いくら力が衰えたとはいえ、谷と直接対決で勝てたとあれば、その選手はおおいに自信を深め、以後、飛躍的に伸びるかも知れない。

山田久志は、決め球のシンカーをルーキーの清原和博にホームランを打たれて引退を決意した。貴花田貴乃花)は18歳の時に千代の富士を破って引退に追い込み、のちに大横綱になった。選手権に出場してあっさり負け、「もう私の時代は終わりました。これからは◎◎さん(谷に勝った選手)の時代です」といって引退すればカッコよかったのに。