2003年の吉田拓郎

  • 田家秀樹、「豊かなる日々」(角川文庫)

「小説吉田拓郎 いつも見ていた広島」と続けて読んだのだが、記録している機会がなかった。

前作が、デビュー前の拓郎を描いたのに対し、こちらは2003年……というのはつまり、肺腫瘍が見つかって、癌を宣告され、手術をしてから、復活して全国ツアーを成功させるまでを描いたものである。また、前作は小説という形態をとっていたのに対し、本作はドキュメンタリー。前作は群像劇だが、本書では主人公は拓郎一人。瀬尾一三とか、田村仁とか、サイドマンのこともきちんと書き込まれているが、彼らは主役じゃない。

エレック、CBSソニー時代の拓郎については僕は相当に詳しく知っていると思っているのだけど、フォーライフに移籍してからは、あるところまでは知っているが、そこから先はほとんど知らないといっていい。ここに書かれていることはほとんど知らなかったため、たいへん興味深く、有益な本だった。

単行本リリースが2004年6月、文庫本リリースが2009年7月。この時、拓郎は「生涯最後」と宣言した全国ツアーを始めたが、体調不良のため途中で中止している。命に別条はないようだが、今のところ、継続のアナウンスはない。

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