2020年5月2日正午、漫画家の野間美由紀先生が虚血性心疾患のため亡くなられた。59歳。
- 訃報 野間美由紀先生が逝去されました(白泉社、2020/05/14)
- 野間美由紀先生が逝去されました(秋田書店、2020/05/14)
- 漫画家の野間美由紀さん、虚血性心疾患のため2日に死去 59歳 『パズルゲーム』シリーズ連載中(ORICON NEWS、2020/05/14)
14日に白泉社が公式サイトにて発表し、それを受けてニュースサイトが記事にしたようだ。秋田書店も白泉社と全く同じ文章だから、白泉社の発表を受けて記事にしたものと思われる。
先生というほどの義理はないのだが、とても呼び捨てでは呼べないし、「さん」とか「様」とかいうのも違和感が残るため、ここでは「先生」とする。
野間先生との出会いは、学生時代に「パズルゲーム☆はいすくーる」を読んだ時から始まる。それまで少女漫画というものをまともに読んだことがなく、少女漫画の主人公は、頭の中は恋愛脳だが下半身を持っていない(男の子のことばかり考えているが、性的行為とは結び付かない)、のように思い込んでいた。が、なんとコイツら……高校生のクセに……ヤッているのである。こんな過激な描写は当時の少年漫画にはなかったのでとてもビックリした*1。
自分の少女漫画に対する見方は一変したが、「花とゆめ」の歴史的にもエポックな作品だったのだのではないだろうか。「花とゆめ」掲載作品を「少女漫画」とカテゴライズすることが正しいかどうかも議論の余地があるかも知れないが。
単行本はずっと買い続けたが、途中から時系列が入り乱れて、中学生にもどったり子供ができたりし、明確な最終回というものが存在しないため、最後まで買ったかどうか確信がない。32巻はあるのだけど、これが最終巻という認識でいいのだろうか。
その後、「シルキー」という雑誌で新たに「ジュエリーコネクション」という作品が始まった。「パズルゲーム☆はいすくーる」では行為を連想させる描写はあるが、行為そのものが描かれることはない。「シルキー」は想定している読者の年齢層が高く、行為そのものもはっきりと描かれる。いわゆるレディースコミックである。
当時、レディースコミックと認定された作品が単行本化されることは少なかったが、野間先生の作品は多くが単行本化され、出ると買い続けた(「シルキー」は手に取ったことがなかった)。「ジュエリーコネクション」シリーズ以外にも「インテリア」「嘘でかまわない」などの佳作が次々と発表された。
「行為」の描写のことばかり述べたが、驚くべきは、そのほとんどすべてが本格ミステリーだということである。恋愛漫画などの場合は、同じような骨格の話を、設定をさまざまにアレンジすることで新作を作ることができるが、ミステリーは、一度使ったトリックは二度と使えない。よくこんなに次々とネタが尽きないものだ。まさに驚嘆措く能わず、である。
それにしても急逝である。つい最近もtwitterでつぶやいているのを見たぞ、と思って確認したら、前日(1日)の夕方(17時20分)にもつぶやいている。
了解でーす😆
— 野間美由紀 (@rose_m) 2020年5月1日
日中から何度も投稿しているが、これが最後だと思われる。内容はごく普通の日常会話である。またRT(リツイート)だと2日の午前1時過ぎまでやっている。直前までお元気だったのだ。身内の方と別れを惜しむ間もなかったのだろう。想像するだに切ない。
最後に、白泉社へどうしても伝えたいことがある。「パズルゲーム」シリーズは現在でも入手可能だが、「シルキー」から単行本化された作品は、現在はすべて入手不可能である。これはいったいどういうわけか。いろいろな事情があるだろうが、野間先生の作品を入手したい人は大勢いるはずだ。ここは万難を排して実現に動いてほしい。紙の本を再刊する必要はない。電子書籍で良いのだ。
*1:今は当時ほど少年漫画を網羅的に読んでいるわけではないので断定はできないが、今もないと思う。恐らく内規的なものがあって、行為を直接連想させるような描写ができないのだろうが、犯罪的な行為(スカートをめくったり、更衣室や風呂場を覗いたりすること)や差別的な行為(特定の女性をブス呼ばわりするようなこと)は制約がない(としか思えない)のは不思議である。愛し合う二人が求め合うのは自然なことで、「パズルゲーム」ではそれを逃げず、照れず、正面から描いただけとも言える。高校生にはちょっと早いとは思うが。