市川森一

12月10日、市川森一氏が亡くなられた。満70歳。

新聞にも大きく載ったから、かなり有名な人だったらしいが、僕にとっては「ウルトラセブン」の脚本家のひとり、という認識しかない。

ウルトラセブンで執筆したのは「V3から来た男」「北へ還れ!」「ひとりぼっちの地球人」「月世界の戦慄」「盗まれたウルトラ・アイ」「恐怖の超猿人」「ダン対セブンの決闘」の7本。どれもきちんと人間を描いており、ウルトラセブンを単なるSF活劇ドラマではなく、すぐれたヒューマンドラマとして昇華させたお一人である。

特に「V3から来た男」は全ウルトラシリーズの中でも最高傑作のひとつに数えられるのではないかとひそかに考えている。まずクラタ隊長の造形がいい。優秀ではあるのだろうが、態度が悪く、上司にこびず、結果、左遷人事で宇宙ステーションに飛ばされる。こういう人を地球防衛軍の中に作ってしまうところがいい。そしてクラタとキリヤマの友情、マナベ参謀とクラタ、キリヤマに対する部下への愛情、ソガ、ダンらの上司(キリヤマ)に対する愛情とキリヤマの友人であるクラタへの気遣い。それらが、押しつけがましくなく、宇宙人との戦いの中にぴったり収められているのだ。

「北へ還れ!」では親子の愛情が描かれる。息子のことを心配して、基地までやってきてしまうフルハシの母(でも部外者だから入れない)。フルハシの命が助からないとわかると、急遽母を呼びつけ、息子と通信させるキリヤマ。母を気遣い、数分後には命がなくなるのに、あえて軽口を叩き大声で笑うフルハシ。ものすごく印象的なシーンである。ちなみに、後年「ディープ・インパクト」でも似たような場面が描かれ、名シーンと評されたが、僕は「ディープ・インパクト」は「北へ還れ!」を知っていて、パクったのだろうと思っている。

ご冥福を祈る。

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(2011/12/18)