円周率はいくつか(最終回):3.14でいいのか

僕が中学生の時は、数学で円周率が出てきた場合はπ(pi)としてそのまま計算し、それがいくつであるかというのはもう気にしなくてもよかったと思うのだが、理科で円周率が出てきた場合は、実際の数値を代入し、有効数字を考慮して具体的な数で回答する、というやり方だったように思う。ここで、円周率の近似値として何を使うか、という問題が浮上する。

浮上するといっても、学校では3.14としか教わらないから、多くの人は疑問を持たず、機械的に「円周率=3.14」としていただろう。しかし三桁の掛け算というのはかなり面倒である。当時、電卓は高価で、ほとんど普及していなかったし、仮に持っていてもそれを授業中(あるいは試験の時に)使うなどということは許されるはずもなかったため、なんとか計算を楽にしたいと常々考えていた。

テストの時に、円周率の近似値としては3.14などの少数の他に、22/7や355/113などが(歴史的に)使われていたことを思い出し、ここは分数を使うと計算がはるかに簡単になると気付き、22/7を使って計算したことがある。どうせ丸めてしまうのだから、結果は同じになると思ったのだ。

ところが答えはバツだった。恐らく、有効数字は三桁で、三桁目が微妙に違っていたのだろう。先生から「つまらない計算ミスをしたな」のように言われた記憶があるから、そういうことだろうと思う。*1その時、学校の中では3.14以外は認められていないんだな、ということを悟ったのだが、正直に言えば少し傷ついた。

ちなみに、22/7 = 3.142857……であり、真の円周率の値3.141592……との誤差は約0.040%。3.14の誤差は約0.051%。22/7の方が精度はよいのである。分数なので「掛けて割る」と二手間かかるが、22の掛け算は2倍したものを桁をひとつずらして足すだけだから、慣れると暗算でできるし、筆算でも比較的楽に計算できる。最後に7で割る、つまり一桁の割り算は、これも慣れれば暗算でできる。

電卓使用を前提とするならいくつでもいいのだけど、現実に円周率を含んだ計算をして、概算を求めるような場合、円周率の近似値として22/7は割といいのだぞ、ということを、ささやかながら主張しておきたい。「円周率は3か3.14か?」というような、二者択一的な話ではないってことだ。

過去記事

*1:たとえば、半径が5.51cmの円の面積を有効数字3桁で計算せよ、と言われた場合、円周率に3.14を使うと95.3平方センチ、22/7を使うと95.4平方センチとなる。誤差を含む3桁の数字を使って計算した結果、3桁目が1や2異なっても、それは正解の範囲内だと思うが、ここは95.3のみが正解とされたということだろう。ちなみに有効数字が二桁なら、ともに95で同じになる。