現在の「傘がない」

井上陽水の「傘がない」の替え歌。これはうまい!

「傘がない」は1972年のリリース。学生運動がやや下火になった頃である。それまで、フォークソング反戦活動とは密接な結びつきを持っており、心ある若者は、岡林信康の「友よ」やザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」を歌いながら、ベトナム戦争や安保の賛否について熱く語り合っていた。

そんな矢先に、「政治問題より、雨が降っているのに傘がないことの方が問題」ということを歌った歌が登場したのである。一部からは軟弱だと言われつつも、「ノンポリ政治的無関心層)」あるいは「しらけ世代」が確実に広がりつつある状況を反映させたものだとして注目を浴びた。

……というような説明を受けると、そうかと思うが、僕自身が、この歌を知った時は「政治問題より、傘がないことの方が問題ジャン」という価値観でいたため、「うわあ、こういうシラケ世代が広がっているんだなあ」という当時の感覚はわからなかった。

ところで、今の僕は確かにこうしてダイアリも書くが、別にアクセス数なんて気にしていないし、ましてブックマークされるかどうかなんて興味の対象外。そういうことを気にする人がいることは想像できるけれども、それが人生のすべてであるかのような言動に接すると、「おいおい、世の中にはもっと大事なことがあるだろう」と言いたくなる。

というわけで、はたと膝を叩く。「傘がないのが問題」という歌を聴いて「おいおい」と思った、その感じは、まさにこういうことなんじゃないかと。だからこの替え歌は、単なる言い換え以上のうまさがあるのだ。

もっとも、字余り・字足らずがあって、歌にはうまく乗らないのが残念だけど。