新約「巨人の星」

巨人の星」を花形満の側から描いたリメイク作品が、少年マガジンで新連載となった。講談社の雑誌「COURRiER Japon」の紹介記事を見てとても興味を持ち、さっそく少年マガジンを買ってきた。

あの泥臭い作品を現代風にアレンジするというのが面白そうだし、花形の側から描くという視点も斬新だと思った。主要登場人物の性格は変えない、ということらしいから、オールドファンもそれなりに楽しめるだろう。最近少年マガジンにはこれといって面白い作品がないから、その意味でも楽しみだった。

……なんじゃこりゃーっ!

花形が、リトルリーグで活躍した名投手で、肩を壊してバッターへ転向したという設定は買おう。正義感の塊というのも、その彼がこれから不良の道をたどる経過が描かれていくのだろうから、今はよしとしよう。背が低いのも、小学校を卒業したばかりはこうだったということで、納得しよう。腐女子な顔(by komachan)も我慢しよう。「エリアの騎士」の月山可也、「あひるの空」の日向武史など、今の少年マガジンはこの手のタッチが主流だからな!

しかし、花形満の生命線は「キザであること」だ。カッコをつけるために死に物狂いになり、しかも、死に物狂いになっている姿を見せない、というところが天才たるゆえんなのだ。「悪たれ巨人」の平松誠がそうであったように、「リングにかけろ」の剣崎順がそうであったように。不良に絡まれてあっさりボコられたり、のぞきと間違われたりする間抜けが花形であるものか。

そもそも、肩を壊してマウンドに立てなくなり、病院通いをしていたが、ようやく回復してまた野球ができる! と喜んでいる矢先だというのに、いくら挑発されたからとはいえ、ウオーミングアップもせずにいきなり全力投球してまた肩を壊すなど、愚の骨頂もいいところだ。こういう人間が一流のアスリートになるとはとても思えない。

単なる野球漫画としてみれば、それなりに面白いかも知れない。しかし、このキャラクターに「花形満」という名前をつけることだけは勘弁してほしいものだ。

余談:ああ、小説「ゲド戦記」のファンが、映画「ゲド戦記」をコキおろす気持ちがわかる気がする。あれも結局、「ゲド戦記」という題名だからいかんのだな。