その職業に向いている人

高校生からの質問をきっかけに、産婦人科に向いているのはどういう人か、という説明をされている。

僕は医業とは無縁だが、以前、採用の仕事をしていた時に、この仕事に向いているのはどういう人か、といった質問をしてくる学生と何人も出会った。中には「私に勤まりますでしょうか」とそのものズバリを訊いてくる人もいた。

このことは以前、「人生は、常にこれからです」(Adminではないけれど、1999/03/02)で触れたことがあるのだが、こういう質問をする人に対しては、僕は逆に問い返したい。「もしあなたはこの仕事に向いていません、と言われたら諦めるんですか?」と。

僕は若い頃、この仕事には向いていない、とさんざん言われた過去がある。学生時代ならともかく、実際に仕事を始めて何年も経っているのに面と向かってそういうことを言われるのだ。相手は、叱咤激励とかではなく、本当に心配して言ってくれるらしく、今からでもまだまだやり直せるだとか、その方が君の能力を生かせるだとか言われると、情けないやら悔しいやらで、涙がこぼれたものである。

今の仕事以上に興味を感じ、能力が生かせる職業があると思ったらはじめからそちらにいっている。自分はこの道しかないと思っていたから、誰に何と言われても、ここで頑張るしかなかった。

ビジネス人生も20年を超え、業界内でも一目置かれる存在になりつつある現在、十数年前に僕に「向いていない」と言った人たちというのは、どういう根拠でそう判断したのだろうか。当時のアンタよりは偉くなったぞ、と苦笑してしまう。それと同時に、安易にそんなことを信じたりせず、自分で決めた道を進んできてよかったな、とも思う。

そういえば落合博満(現・中日監督)がプロに入ってきた時、バッティングフォームを見た山内一弘張本勲らが、口を揃えて「あれではプロで通用しない」と言ったのは有名な話である。もちろん落合は通用しないどころか、日本のプロ野球が生んだ屈指の強打者であったのは説明するまでもない。まあ、いくらなんでも落合と比較するのは不遜が過ぎるかも知れないが。

marikoさんのところに書き込んだ高校生は、自分が向いているかどうかが知りたいのではなく、産婦人科を志すことは既に決めていて、学校の勉強以外にどういう勉強や訓練をすればよいのかを知りたがっているように感じた。その意気やよし、である。