午後の恐竜

本を読んで怖くなる、という経験があまりないが、一度だけ、背中がぞくっとして、しばらく身体の震えがとまらないような経験をしたことがある。

それは星新一の「午後の恐竜」だ。読んだのは中学生の時だったと思う。

ある日突然、街に恐竜が現われる。ゴジラのように破壊活動をするわけではない。ゆうゆうと闊歩する。なんでこんなことが? と調査を始める人もいるが、街の人は、どちらかというと、のどかにそれを眺めている。文章も、ほのぼのタッチで描かれる。

が、その真相が判明する。判明するというより示唆されるのだが、真相を理解した瞬間、ぞーっとなったのだ。

その後も、怖い小説には何度かお目にかかったが、この時の「怖さ」を超えるものはない。

午後の恐竜 (新潮文庫)

午後の恐竜 (新潮文庫)