西口文也、あわや完全試合

8月27日、ライオンズの西口文也投手が、ゴールデンイーグルス戦において9回までランナーを許さず「完全」に抑えたが、味方も一場投手から得点できず、延長戦に突入。10回に沖原佳典内野手にヒットを打たれ、完全試合を逃した。ただし後続を抑え、その裏ライオンズが一点取ってサヨナラ。延長戦を完封で16勝目を挙げた。これはホークス杉内と並ぶ、現在最多勝

西口は、2002年8月26日のオリオンズ戦、および2005年5月13日のジャイアンツ戦において、ともに9回ツーアウトまでノーヒットノーランだったが、次の打者にヒットを打たれて記録を逃している。

「僕は記録に縁がないんでしょ。チームが負けなくて良かった」と淡々と語ったとのことで、朝刊では「またも球史に名を残すことができなかった」と書かれていた。果たしてそうだろうか。

これまで、ノーヒットノーラン完全試合を含む)を達成したのは71人、82回。これに対して9回ツーアウトまでノーヒットだった(が結果的にノーヒットノーランを達成できなかった)のは、21人、23回。こちらの方が、記録としての希少価値は高く、観客に与える興奮度も上だったといえる。

これまでオリオンズの仁科時成投手が、この怪(?)記録を一人で二度達成しており、悲劇の主人公として引き合いに出されることが多かったが、西口も今季二度目を達成した。さらに9回を「完全」に抑えながら延長戦で逃したのは、プロ野球70年の歴史の中で西口ただ一人。すべて28人目の打者に打たれて達成記録を逃しているが、これこそが球史に残る大記録だといえるのではないだろうか。

ノーヒットノーランを複数回達成した投手は、沢村栄治(3回)、石田光彦、中尾輝三、亀田忠、藤本英雄、真田重蔵(真田重男)、金田正一外木場義郎(3回)、鈴木啓示となる。亀田以前はすべて戦前であり(藤本、真田は戦前と戦後に一度ずつ)、鈴木が二度目のノーヒットを達成したのは1971年。現在の打者優位の時代に、27人をノーヒットで抑えること三度の西口がいかに偉大であるか、よくわかる。

ちなみに、9回をノーヒットに抑えながら延長戦に突入したケースは西口以前に9回あったが、そのまま延長戦をノーヒットに抑えたのは江夏豊ただ一人。ノーヒットは逃したものの勝ったのは、他に2回しかない(勝率0.333)。2回は引き分け、4回は負け試合になっている。西口がそうした勝率の低さを知っていたかどうかはわからないが、「チームが負けなくて良かった」という言葉の重さを改めて感じる。

<参考>