MTとATと

  • MT,AT(REVの日記、2012/06/11)
年代 比較 新車 既存車
80'- MT>AT
90'- MT≒AT MT/AT併売 社用車、営業車にはMT少なくない
00'- MT≦AT ATのみが増える
10'- MT < AT 探さないと無い 社用車、営業車もATに代替

1985年当時、少なくとも首都圏においては、レンタカーは原則すべてATだった。MTも指定すれば不可能ではなかったけれど、あらかじめ予約をする必要があり、時間がかかるとか、希望の車種がないとかの制限もあった。ちょうど免許を取ったばかりで、頻繁に各地のレンタカーを利用していたため、この辺のことはよく覚えている。

僕が免許を取った時はAT講習がなかった。つまり、免許上はATの運転もできるが、教習所ではATの運転は一度もしたことがなく、ATがどういうものかも教わっていない。教習所ではやたらにエンストさせてしまい、教官から「エンストの帝王」などと揶揄されていたため、免許を持っている友人に「クラッチのない自動車くらい発明してほしいよなー」などと愚痴ったら、「ありますよ」と言われてATの存在を知った、という程度のもんである。

初めてレンタカーで自動車を借りた時、いざ乗ろうとしたらATだったため「うわっATか……」とつぶやいたら、レンタカー屋の人が「ATは初めてですか?」と気遣ってくれて、その場で簡単に使い方を教えてくれた。それでAT車の路上運転を始めたので、あれは怖かった。

運転している時は怖いとは思っていない。だいたい、免許取り立ての人は、運転を怖いとは思わないものである。それから何年もして、運転にずいぶん慣れた頃、その時のことを思い出して、あれはずいぶん怖いことだったな、と思ったわけだ。

結局、その後一度もMT車は運転する機会がなく、ずっとATで……というわけでもなく、一度だけMTを運転したことがある。MTといえば教習所でエンストばかりさせていた厭な思い出しかないし、その後ずっとATばかり運転していたから、運転できるかな、と不安だったが、いざ運転してみたら、何の問題もなくスムーズに運転できたので自分でも驚いた。

要は、運転初心者は、クラッチの踏み方が下手だからエンストを起こすわけではない。すべてが下手くそなのだ。その結果がたまたまエンストという形になったに過ぎない。運転に慣れ、ハンドル操作もブレーキングも、標識を読みとることも、周囲の自動車の挙動に気を配ることも、自然に、余裕をもって対処できるようになれば、クラッチペダルの操作だってできるということだろう。

ところで、最初に入った会社には、ベンツとスカイラインという社有車があった。ベンツの方はもちろん、社員が勝手に使うことはできなくて、社長専用であった(バブル真っ最中でしたからね……しみじみ)。営業用に使うのがスカイラインだったが、こちらはATだった。営業車がスカイラインという選択もなかなかすごいが、スカイラインを選択した人は、スカイラインなら当然MTだ、とは思わなかったのだろうか。

社有車なので恐らくはリースであり、リースであるから頻繁に新車に交換していただろう。そして、この頃、特に指定がない限り、新車で購入すればATの方が普通だったのだろう。少なくともリース車にはMTはあまりなかったのだろう。

初めて自動車を買ったのが86年か87年で、その頃はクルマ雑誌をあれこれ読み漁っていたが、「峠を走るならMTで、という人は多いが、最近のATは非常によくできており、素人が下手にギアを変速させるよりATに任せた方が、ずっと速いし、燃費もいい」などと書きたてられていたものである。今から思えばAT車を普及させようとするメーカー側の意向に沿って書かれていたのかも知れないが。

というわけで、自分の感覚では、1980年代は既に「MT < AT」であった。恐らくレンタカー、リース車、新車は「MT << AT」だっただろう。一方、バス、タクシーはMT、そして何年も乗っている自家用車もMTが主流で、だから世の中全体としては「MT≒AT」ですかねえ? タクシーは長らくずっとMTで、ATが混じるようになったのはほんのここ2〜3年のことかと感じている。