スーのお通夜

いろいろ知らないことはあるんだなあ。そんなことばかり考える。

スーが20年近くも癌と闘っていたなんて知らなかった。弟さんを早くに亡くされていたなんて知らなかった。芸能界に復帰したのも、その弟さんに「テレビで頑張っている姿が見たい」と言われたからだというのも知らなかった。僕が知らなかっただけではなく、一部の関係者以外は知らされていなかったようだ。美談にも、売名にもなり得ることだが、彼女はそういうことを一切表に出さず、笑顔で仕事を続けていた。逆に言えば、笑顔の裏には様々なことがあったということだ。

スーが亡くなった時、当然すぐにコメントを出してしかるべきランは、事務所から「ショックでコメントが出せる状況ではない」と言われていた。その時はちょっと違和感があった。ショックはショックだろうけど、スーの病気のことは知っていて、病床を見舞ったりしていたと聞いていたので、連絡を受けてもそこまでショックを受けるものなのかなあ、と感じたのだ。

お通夜の時に報道陣に語ったところによると、病床を見舞ったのは一度ではなく、ミキと一緒に毎週病院に行っていたという。そして、危篤になった時も、ご家族から「わたしたちは家族も同じだから」という配慮で呼んでもらい、7時間、つきっきりだったという。そして、最期を看取ったのだそうである。

それでわかった。僕も父の最期を看取ったからよくわかるが、人間が徐々にその機能を失い、息を引き取るのを目の当たりにするのは、相当なインパクトである。親しい人間ならなおさらだ。激しく動揺し、口を利く気になれなかったとしても不思議はない。

ランとミキが揃ってお通夜の場に現われると、報道陣が取り囲むのは致し方ないところだが、コメントを求められたのはランのみで、ミキにはTVカメラは向かなかったようだ。ランは現役の女優だが、ミキは既に引退して長く、一般人だからという配慮からだろう。マスコミは、時に自分勝手で腹の立つこともあるが、今回の姿勢は素晴らしいと思った。これもスーの人徳であろうか。

ランちゃんミキちゃんに見送ってもらえて、よかったね、スーちゃん。

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