つかこうへい死す

つかこうへいは、大げさにいえば僕の人生観を変えた人物である。小説やエッセイはもちろん、映画「蒲田行進曲」(松坂慶子風間杜夫平田満)「青春かけおち篇」(風間杜夫大竹しのぶ)「二代目はクリスチャン」「熱海殺人事件」、TVドラマ「蒲田行進曲」(大原麗子沖雅也柄本明)「かけおち'83」(長谷川康夫大竹しのぶ)「つか版忠臣蔵」などをリアルタイムで見られたのは幸運だった。

蒲田行進曲」は映画も悪くなかったが、小夏が上品でいい女に描かれ過ぎていた。深作欣二監督は、当時付き合っていたとも噂される松坂慶子を、あまり下品な女に描きたくなかったのであろうか。一方、銀ちゃんが小夏を振って付き合おうとした朋子は、銀ちゃん憧れの「お嬢様」のはずなのに、演じたのが高見知佳では軽い。小夏と朋子が並ぶ場面では小夏の方がよほどいいとこのお嬢様風に見えた。これではストーリーがぶち壊しである。

TVドラマ版の「蒲田行進曲」を見た時はびっくり。大原麗子の小夏がものすごく蓮っ葉な女だったからだ。いかにも銀ちゃんに似合いの女だが、銀ちゃんが物足りなく思うのもわかってしまう、見事な演じぶりだった。一方の朋子を演じたのは、当時は青山学院大学出身で「インテリアイドル」という立ち位置だった川島直美。着物を着てお茶をたてる姿はいかにもセレブなお嬢様で、銀ちゃんが憧れるのが(しかし、二人の仲が長続きするわけないのも)よくわかるうまい人選だった。このDVDがリリースされていないのは解せない。

「青春かけおち篇」の風間杜夫も悪くなかったけれど、もともとは長谷川康夫に当て書きされたといわれるだけあって、長谷川の能天気な明るいキャラでこそ生きるセリフが多く、風間では今一つ生かせていないと思った。テレビ版の演出をしたつかこうへいが「天才だ」とうなったという大竹しのぶの演技も、映画では少々わざとらしさが目につく気がした。こちらはビデオでなら入手できる。

悔いが残るのは、肝心の舞台を一度も観に行かなかったことだ。しかし、恐らくつか氏があと5年長生きしても、つかの舞台を見に行くことはなかっただろう。残念だが、そういう縁だったのだ。

蒲田行進曲 [DVD]

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青春かけおち篇 [DVD]

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二代目はクリスチャン [DVD]

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