ビートルズのカントリー「ビートルズ・フォー・セール」

一枚目が「one, two, three, four!!」で始まり、二枚目が「It won't be long, yeah」で始まり、三枚目が(例の)ジャーーーン!! でと、衝撃的に始まるのに、これはおとなしく「This happen once before...」だから、いきなり拍子抜けしてしまう。

全体としてシンバルの音が小さく、低音部が強調されて、かなりこもった感じ。引き締まっていないというか、シャキっとしないというか。これは今回のCDで是正されず、むしろさらに助長された気がする。これまでとは路線がかなり変わって、C&W調になったとでもいえばいいのだろうか。過去3作の延長線上でいっそうのロックンロールを期待した人は、ここで手痛く裏切られることになる。

個々には名曲が多いが、アルバム全体としてはまとまりに欠け、インパクトがないと言わざるを得ない。もっとも、こうして改めて聴いてみると、のちの「ラバー・ソウル」などを彷彿とさせるものもあり、決して悪くはない……。悪くはないのである、個々の曲は。

来日した時のコンサートのオープニング・ナンバーであるRock and Roll Music、同じく来日コンサートで歌われたBaby's in Black。そのコンサートを中心に作られたテレビの1時間番組で、がらんとした首都高(交通規制がされていたから)を走るリムジンを映した時にかぶった「ミスタアアーアアアアーアームンライッ!」というジョンのシャウト。どれも忘れられない曲である。だがやはり、全体を通して聴くと印象は薄い。

このアルバムは、「先人にリスペクトを表して、自分たちのルーツを整理しよう」という思惑で作られたのかな……当時、そこまで余裕があったとは思えないけど、結果的にそうなっているから。あるいは、「ハード・デイズ・ナイト」で頑張り過ぎて、しばらく自作曲のストックが切れたとか。

Baby's in Blackは、左に不思議なバスドラが聞こえた。今まで知らなかった音だ。

Eight Days A Weekは、曲としては悪くないけど、パンチに欠ける。やはりhand clappingが良くないよ……しまりがないよ……

ビートルズ・フォー・セール

ビートルズ・フォー・セール