イチロー、日米通算3086安打

4月15日(日本時間16日)、復帰初戦でイチローは2安打を放ち、日本記録である張本勲の3,085安打に並んだ。記念となる2本目の安打はなんと満塁ホームランという記念弾だった。そして翌日、観戦にきていた張本の目の前で記念となる3,086本目のヒットを打った。

イチローの偉業には賞賛を惜しまないが、大騒ぎをするマスコミ報道には強い疑問を感じる。

多くの新聞が、3,085安打を「タイ記録」とか、3,086本が「新記録」「日本人最多」などと書いているが、これは間違い。日米通算の数字は、メジャーリーグでもNPB日本野球機構)でも公式記録として認定していないから、タイ記録でも新記録でもない。単に数字で並んだ、あるいは追い越したというだけだ。

イチローはプロ入りしてから2年間は主に二軍暮らし。二軍戦で何十本かヒットを打っているはずだが、それは加算されない。二軍戦は公式戦じゃないというなら、高校時代に地区大会や甲子園大会で打ったヒットも加算されない。プロでの記録だけ、というなら、日本のプロ野球を引退したあと台湾へ行って当地で数年間活躍した人は何人もいるはずだが、日台通算の記録は整備されているのか。

NPBMLBは、レベルの違いは一応措いておくとしても、使うボールも、球場も、試合数も違う。それで数字だけを足すことにどういう意味があるのか。その意味について解説した記事は、寡聞にして目にした覚えがない。

日本人最多というが、張本勲は日本人ではない。NPBに所属したことのある選手、という意味なら、元メジャーリーガーで日本に移籍してきたいわゆる助っ人外人の日米通算記録はどうなっているのか。恐らく3,000を超える人はいないと思うのだが、まずは洗い出しが先ではないか。

張本を越えたというが、日本では当時の年間試合数はほぼ130。MLBでは162試合。単純に試合数を25%増しで考えると、張本の安打数は3,800本くらいになった計算になる。イチローが張本を数字の上で抜かしたからといって、張本の数字が色あせるわけでは決してない、ということだ。今でも文句なしの最多安打の記録であり、これからも、恐らく誰にも破られることのないアンタッチャブルとして輝き続けるだろう。

野球というのは、数字(各種の記録)を眺めているだけでも楽しめる、不思議なスポーツである。だからこそ、記録には厳正さが要求される。定義もあいまいな記録を作ったり、都合のいい数字だけをかき集めてくるのは、当の選手に対しても、先人に対しても、失礼極まりない話だ。

もしイチローと張本を比較するなら、張本は3,085安打を2,752試合で達成した(一試合あたりのヒット数は1.12)が、イチローは3,086安打を2,233試合で達成した(一試合あたりのヒット数は1.38)こと。日本の通算安打記録の上位を見ていても、出場試合数より安打数の方が多い人というと、

順位 氏名 出場試合数 通算安打数 1試合あたりの安打数
6 福本豊 2,401 2,543 1.06
8 長嶋茂雄   2,186 2,471 1.13
10 土井正博 2,449 2,452 1.00
11 落合博満 2,236 2,371 1.06

となり、それ以外の人(野村克也王貞治門田博光衣笠祥雄立浪和義……)はそもそも試合数より安打数の方が少ない。これらと比較してイチローの量産ぶりがいかにすごいかがよくわかる。

MLB最多安打記録は、ピート・ローズの4,256本。現在35歳のイチローがあと何年現役を続け、あと何本ヒットを打てるかはもちろんわからないが、仮に40歳まで現役を続けたとする。イチローMLBでの8年間で1805本のヒットを放っている。年平均225本。このペースが5年続けば、通算で4,200本を超えることになり、P・ローズの数字が視野に入る。この時MLBは「日米通算」を記録として認めるだろうか?

参考リンク

クリタさんの方が書き方が論理的だ。しかし、スミスやクロマティが日米通算で2000本を超えていたとは知らなかった。なぜ日本のマスコミはこういう偉業を報道しない! そして、なぜ彼らを名球界に迎えない! スミスなんかは名球界など興味ないかも知れないけど、クロマティなんかは大喜びしそうなのに。