佐渡旅行:旅館考

二泊した「湖畔の宿 吉田屋」は、かなり良かった。以下、列挙してみる。

  • 港からの距離は近過ぎず、遠過ぎず。歩いて10数分だったか。散歩にちょうどよい距離。歩くのが厭な人は無料の送迎バスもある。
  • 部屋は思っていたよりずっときれいだった。畳も新しかった。
  • 「湖畔」が示す通りのレイクビューは素晴らしい景観だ。島の中の小さな湖なのでさして期待していなかったのだが、どうしてどうして。湖の向こうに見える雪山を眺めているといつまでも飽きない。夕陽が湖に照り映える様子は「来て良かった」と思わせた。
  • 特大の浴衣を用意してくれた。普通、旅館やホテルで常備してある浴衣は、長身の僕には短過ぎて合わないのだが、これはありがたかった。事前にわかっていたら、寝巻を持っていかずに済んだのに。
  • バスタオルが(手拭いとは別に)一人一枚ずつ用意されている。ホテルは別だが、旅館ではバスタオルが用意されておらず、手拭いだけ、というところが多い。これもありがたかった。事前にわかっていたら、持っていかずに済んだのに。
  • 髭剃りは、部屋にはないが、大浴場に用意されている。まあ、旅行中に髭は剃らないのだが。
  • 露天風呂がある。寒い中の露天風呂はいかがなものかと思ったが、これが大変心地良かった。脱いで湯殿に浸かるまでが少々寒いが、浸かってしまえば温かい。ちょうど雪が降っていたのだが、なんともいえない気持ちよさと開放感があった。しかし、雪って意外に汚ないものなのだな。お湯の上に直接降った雪は即座に溶けるのだが、あとに土埃のようなものが残る。湯の中にはそうしたゴミがたくさん混じっていた。
  • 大浴場はシャワーが強くて助かった。水圧の低いところも多々あって、そういうところは閉口する。温泉は、しばらく肌がつるつるになる(気がする)。
  • 食事は豪華かつ美味。海老も蟹も食べきれないほど出た。貝殻を容器の代わりにして作られた茶碗蒸しは絶品。
  • 大浴場、露天風呂、各階に共通トイレの他に、部屋の中にも洗面所、トイレ、浴室がついている。最近は各部屋にトイレが当たり前になってきたようだが、廊下まで出るのは寒いので、特に冬はトイレが部屋にないとつらい。また、今回は幸い必要なかったが、温泉が肌に合わないこともある。そのため、部屋に浴室があるのはありがたい。
  • 初日の夜、布団の中で、来年もきっとこの旅館に来よう、と決意した。

ただし、気に入らない点が皆無だったわけではない。参考までに書いてみる。

  • 料理が豪華なのはいいのだが、配膳が早過ぎる。最初は、前菜などをつまみ代わりに酒を飲んだりしたいわけなのだが、刺身から鍋から蟹から一式をどんと持ってくる。鍋はどんどん煮えてしまうので、それではとどんどん食べることにする。とはいえ元々二時間くらいかけて食べるコース料理に匹敵するくらいの分量がある。そうそう食が進むものではない。
  • が、30分もしないうちに炊き物・ごはん・お汁にデザートまで持ってくる。最初に配膳された料理は、まだ半分くらいしか食べていない。ここまで追い立てられるようにして食べるのでは、肝心の料理を楽しめない。年末で慌ただしく、少しでも早く進めたいという気持ちはわからないではないが……と、31日の夜は思ったのだが、翌日の夜も(朝も)同様であった。料理をゆっくり楽しんでもらおうという感覚がいささか欠けているのかもしれない。残念なことだ。
  • 二日目の朝「何時ごろお出かけになりますか? その間に部屋を掃除しておきます」と訊かれる。特に観光の当てもなく、部屋でごろごろしていたかったため、「どうせ連泊ですから、掃除は結構です。浴衣も、タオルも、交換の必要はありません」と言っておいたのだが、何度も内線電話がかかってきて、「お掃除はよろしいでしょうか」とか「タオルの交換を……」と言われるのには閉口した。
  • 向こうにも手順があって、やるべきことをやらせてほしいのかも知れないが、一日使っただけの歯ブラシを交換してしまうのは資源節約の点からも感心できない。慌ただしく移動しなくても、ゆっくりできるのが連泊の魅力ではないか。以前泊まったホテルでは、連泊の場合、オプションでルームクリーニングを断わると200円引き、というサービスがあった。別に料金を安くしてくれなくていいのだが、「放っておくのもサービス」だという認識を持ってほしいものだ。

また、以下は特に不満に感じたというほどではないのだが、ついでに述べる。

  • 食事は部屋出しである。各部屋まで料理を運ぶのはかなりの手間だと思うが、家族連れが多いようだから、これは重要なサービスなのであろう。小さな子供のいる家庭にとって、他のお客さんもいる大食堂では親の気が休まらないだろうから。しかし、僕らにとっては部屋出しは別にありがたくも何ともない。食堂で食べる、という選択肢を用意してほしいところだ。
  • 部屋に何が用意されているのか、どこまでが料金に含まれているのか、事前に知りたい。たとえばWebサイトには明記しておいてほしい。
  • 部屋付きの女性の従業員さん(仲居さん)の名前は、「まりこ」とか「けいこ」とかいい、名札にもそう記してある。これではクラブかキャバレーみたいだ。しかも、そう名乗る相手は、自分の母親とたいして変わらない世代の人なわけで、これは勘弁してほしい。他人を下の名前で呼ぶのはよほど親しい場合であり、一般には「タナカさん」とか「タカハシさん」とか呼ぶものだ。