ノムさん、「発つ鳥あとを濁さず」ですぜ

イーグルスの第二ステージ進出とは別に、いや、だからこそなんだろうが、野村監督の解任問題が騒ぎになっている。

まず、創立以来のイーグルスの成績を見てみよう。

監督試合勝利敗戦引分勝率
2005田尾136389710.28151.5
2006野村136478540.35633.0
2007野村144677520.47213.5
2008野村144657630.46111.5
2009野村144776610.5385.5

最後の「差」というのは一位チームとのゲーム差である。こうしてみると年々成績を挙げてきていることが窺える。初年度の成績を改めて見ると、「お見事」という他はない。

野村監督は、最初は3年契約で、3年経った時に一年契約で更新した。しかし今年の成績に関わらずもう更新はしない、つまり今年が最後だというのは当初から言われていた。そこで、いい成績をあげればまさか辞めさせられることはないだろうと必死になっているのが今年の好成績の理由では? と5月7日に書いた(「春の珍事か実力か」)。

6月7月にちょっと停滞したが、8月からは勢いを取り戻し、順位を少しずつ上げて、CS出場も夢ではない状態。それなのにスポーツ新聞や週刊誌では、次の監督の名前として東尾、ブラウン、果ては星野まで挙がる始末。本来はこうしたことを軽はずみに報道するマスコミの姿勢にも問題があると思うが、次期監督をめぐって球団で動きがあったのも事実なのだろう。

そして2位を決めてペナントレースを終えた日、球団から正式に契約を更新しないむねを通達されたそうで、これに怒り心頭の野村は、(1) 球界の常識として、これだけの成績を挙げたら更新が当然、(2) 仮にそうするとしても伝えるタイミングが悪過ぎる。これからCS、日本シリーズと、日本一に向けて頑張ろうとしている時になんでそんなことを言うのか、(3) (球団が提示した)名誉監督、永久欠番などはまやかし、と激しく批判し、面談を希望していたオーナーを無視して帰宅、思いのたけをマスコミ等にぶつけることになる。以来、連日その話題でにぎわっているというわけだ。

CS第一ステージで勝ち上がった後、観衆の前で監督挨拶を行なった際、「ノムさん試合後にファンにあいさつ」(日刊スポーツ、2009/10/17)によれば、

……この場を借りて、報告とお礼を申し上げます。みなさんもご存じだと思いますけど、先だって正式に球団の方から今シーズン限りで解雇と、通告を受けました。4年間ではありましたけど、あっという間に終わった感じがいたします。……

と、わざわざ言ったらしい(その後いくつか見たスポーツニュースでは、その部分はいずれもカットされていたが)。

その後も野村の怪気炎はとどまるところを知らず、スポーツ紙の見出しをチラ見した限りでは「(球団フロントは)宇宙人」「情のかけらもない」「(自分が辞めれば)来年は最下位」など、吠えまくっているようだ。野村本人が言うのならまだわかるが、ニョーボのサッチーまでがテレビや週刊誌でさらに過激に吠えている様子。

さて、ここ数年のチームの躍進は、野村の功績が大であったのは間違いないところだろう。さらに、今や野村は野球界で一、二を争う人気者で、スポーツ新聞やテレビで「ノムさんのボヤキ」と題する特集がしばしば組まれるほど。新興球団のイーグルスがここまで人気を集めるようになったのも、もちろん初代監督の田尾のキャラクターや、岩隈、田中、山崎といった人気選手の存在もあるが、野村の力は大きかった。これは観客動員にも大きく反映したはずで、つまり球団に対して成績以上に売上げで貢献したはずだ。

この野村をなぜ辞めさせるのか、不思議といえば不思議で、自分としてはもう少しノムさんの監督姿を見ていたいと思うが、もともと高齢が理由だと聞いている。真偽のほどは定かではないが、遠征途中で倒れたこともあるとか、審判に選手交代を告げる時によく選手の名前を間違えるとかいう説もある。当人が(そして我々ファンが)思っている以上に老化は進んでいるのかも知れない。鍛えた身体だとはいっても、もう74歳だからなあ……

契約を更新しないことを野村に伝えたタイミングはいかにも悪く、野村が怒るのもわかるが、野村の名誉を守るために、いくら悪者にされても球団が野村の老化が進んでいる事実を公表せずにいるのだとしたら、「情のかけらもない」という野村の批判は真逆だということになる。

球団が提示した永久監督の座も、現場を離れてもご意見番としてまだまだチームに貢献してほしいという意味だろうし、永久欠番なんて、わずか13人しか事例のない(ベイスターズやファイターズの100、イーグルスの10を除く)名誉ある措置ではないか。

今さら球団が契約を更新する意思はなさそうだから、この上見苦しい態度を取るのではなく、有終の美を飾り、球団とは友好的な関係を保ってほしい。できれば永久欠番は受けてほしい。

それでも、野村克也本人がぼやくのはまだわかるが、野村沙知代、アンタが偉そうに言う資格はこれっぽっちもないんだぞ。アンタのそういう態度がダンナの評価を落としているということを忘れるな。南海をクビになったのだって、阪神を辞めざるを得なかったのだって、アンタが原因じゃないか。今回だって、もしかしたら本当の理由はアンタなのかも知れないのに。