吾妻ひでお

2019年10月13日、漫画家・吾妻ひでお逝去。69歳。

この「訃報」カテゴリーで記載している人は多くが80代で、年齢的には致し方ないかと思うが、69歳はいかにも若い。ただ「失踪日記」に描かれたような生活を送っている限り、長くは生きられなかっただろう。

漫画家でも小説家でもない自分が「影響を受けた」とは言いにくいが、幼い頃から今に到るまでずっと好きでいる(数少ない)作家である。年齢とともに作風が変わり、読者である自分も年齢とともに嗜好が変わるわけだが、それがうまく嵌まったのだと思う。小学生の時に「ふたりと五人」に出会い、中学時代に「パラレル狂室」、高校時代に「不条理日記」、二十歳を過ぎて「陽射し」「ミャアちゃん官能写真集」「ひでおと素子の愛の交換日記」、そしていい年齢になって「失踪日記」と、その時その時で夢中にさせられたのだ。

週刊少年チャンピオンという漫画雑誌を代表するギャグマンガはなにか? と言えば、恐らく多くの人が「がきデカ」を挙げると思うし、今となってはそれが正解であろうが、「がきデカ」が登場するまで圧倒的な人気を誇っていたのが「ふたりと五人」であったことは言っておきたい。

吾妻ひでおの業績を紹介する時に、とかく不条理漫画・ロリコン漫画で注目を集め……と、その時代から語られることが多いが、その前に普通の人気漫画家だった時代があったのだ。本人にとっては不本意な作品だったようだが、だからといってこの時代の実績を過度に矮小するのはおかしいと思うのである。

失踪日記【電子限定特典付き】

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(2020/1/5 記)