Windows 95登場のころ

Windows95が急速に普及したのは、
天の時:ネットワーク環境の整備 :ダイヤルアップ→ISDNADSL
地の利:CPU速度に代表されるハードウエアやOSの進歩:i486→Pentium→Pentium2、Windows3.1→Window95→98
人の和:E-mail、掲示板、ヤフオク、といったコミュニケーションツールの普及

とか言えなくもないけど、漸進的に進んでいた流れを、業界が「Windows95ブーム」で盛り上げた感はある。

Windows 95で実現された機能というのは、Macintoshにおいては、1991年にリリースされたSystem 7で実装されているものばかりで、目新しいものは何もない。WindowsがようやくMacに追いついたのが95なんだけど、Microsoft側はもちろん「追いついた」とは口が裂けても言わないから、大掛かりなキャンペーンを行なって、コンピュータ史上、時代を画する製品が登場した、というイメージ戦略を推し進め、Appleを除く業界全体がそれに追随したのが「Windows 95現象」。

1993年に仕事の都合でMacからWindowsへ乗り換えた時、これまでWindowsなんて触ったことはなかったけど、使いやすい使いにくいの差はあれ、基本的には同じようなことができると思っていた。ところが、いざ使ってみて、Windows 3.1のあまりの貧弱さに愕然。特にネットワーク機能をまるで持っていなかったのには参った。なぜ世の中にはMacというものがありながら、多くの人はそれを使おうとしないのか?(当時のMacのシェアは5%を切っていたと記憶している)特に94年に、「来年Windows 95が登場すると、世の中はこれだけ変わる」という宣伝が盛んに行なわれているのを見、いや来年まで待たなくても今すぐMacを買えばこれが実現するよ、と思ったものである。

ただし、Microsoftの技術力が低いとは僕は思わない。当時のWindows NTは、逆にAppleが多大な費用をかけて開発していながらついにリリースすることのできなかった*132 bit、完全マルチタスクが実現され、極めて安定して動作したからだ。この時期、僕が本当に画期的だと思ったのはWindows NTである。Microsoftは、Windows 95が画期的だなどと欺瞞に満ちた広告は作らず、Windows NTが凄いのだと事実を正直に語ればよかったのに。そして、Windows NTをもう少し安価に提供してくれれば、もっとありがたかったのに。

*1:Appleは、1991年にIBMと共同出資でタリジェントという会社を設立し、次期OSであるPinkの開発に着手。しかしその後は鳴かず飛ばず、結局1995年に、数千万ドルの負債を残してタリジェントを終えた。1993年頃からはCoplandという新OSの開発をアナウンス。1995年1月に機能を明らかにし、1996年にリリースの予定だったが、もちろんβ版すら公開できず、その年の秋、継続の努力をするより終息させた方が良いという判断をくだした。1996年12月、AppleはNEXT社の買収およびスティーブ・ジョブスの復帰を発表。以後のMacOSNEXTSTEPがベースになる。つまり、Apple自身は32 bit、完全マルチタスクOSはついに開発できなかったのだ。