可愛い女の子を描く漫画家

gooのランキングを批判していて、批判じゃないのかも知れないけど、飽き足らないと思っていて、改めて自分たちでランキングを作ったもの。元のgooの記事はこちら。

どういう設問で、どういう人を対象にしたアンケートなのかはっきりしないが、あまり難しいことを考えさせず、反射的に票を入れさせるように仕向けたものと考えられる。有効投票数もわずか1000程度だったようだから、有意なランキングかどうかは異論があるところだろう。

明示的ではないのだが、恐らくその作家の全時代の作品を対象にしていると思われる。言い換えれば、自分がかつて「可愛い!」と思った女性キャラを描いた(男性)作家を選ぶということだ。が、それは無理があるだろう。そうした歴史的ランキングも意味はあるが、その場合は相応な仕掛けをした上で臨まなければ、納得のいく結果が出るわけがない。歴史を越えた比較というのは本来はできないのだから。

やるなら、2010年に発表された漫画作品に限定して順位を出したら面白いのにと思う。それなら比較する意味があるし、それなりに納得のいく結果になるはずだ。もちろん、2009年版、2008年版……と作って、その変遷を見たらもっと面白いし、価値がある。

これをやると、新作を発表しなければ対象外になるから、江口寿史がいくら吠えたところでそもそもランキングに入ってこない。いや、ひばりくんの単行本の何度目かの再刊があったから、それに関しては一応対象にしようか。ただし江口のいうあだち充批判は当たっている。

あだち充は漫画家生活40年以上で、絵柄もいろいろ変わってきている。それを一緒くたにして論じるのは無理がある。江口のいう「男も女もみんな同じ顔しか描けない」というのは後期の(現在の)話である。「ナイン」や「みゆき」(の前半)の時代は、可愛い女の子を描く作家として、当時のトップクラスであっただろう。近年の作品には当時の冴えはない。*1

作品の発表された期間を限定すればフェアな結果になると思うが、素人は、それが2010年1月以降に発表された作品かそれ以前のものか、区別することは難しい。その点、メンズサイゾーでは、投票した20人は出版業界の人間だそうだから、それを調べるのは簡単なことだろう。が、そうした点を考慮したようには思えない。それならせめて投票した人の年齢を公開してもらいたい。世代によって偏りができるに決まっているんだから。

歴史を越えた比較が難しいというのはこういうことだ。キャンディーズAKB48とどちらが可愛いか? と訊かれて、40代・50代の男性なら、キャンディーズと答えるに決まっている。が、10代20代の人なら、たいていの人がAKB48を挙げるだろう。だから、もし比較をするのであれば、うまく仕掛けを考えないと、単に100人に聞いたらこうでした……とやったって、誰も納得するわけがない。

僕らの世代からすれば、可愛い女の子うんぬんといわれた時に、吾妻ひでおの名前があがっていないランキングなんて信用できるワケがないのである。

近年の作品に限定するなら、僕だったら、月山可也(「エリアの騎士」のセブン)、勝木光(「ベイビーステップ」のなっちゃん)の名前を挙げるかな。

ナイン〔小学館文庫〕 1

ナイン〔小学館文庫〕 1

ベイビーステップ(16) (講談社コミックス)

ベイビーステップ(16) (講談社コミックス)

*1:話の作り方がうまいせいで、性格美人であるとはいえる。とはいえ、異性としてキュンとくる、というより、近所の子供を見ていてかわいいなあと思うような感覚に近い。作者も還暦を越えているからなあ。