忘れじのキャンディーズ

あまりテレビをみない子だったが、キャンディーズは登場した時からよく覚えている。「8時だヨ! 全員集合」でアシスタントとして、椅子や道具を運んだり、他の歌手が歌う時後ろで踊ったり、コントの相手役を務めたりしていた。そのうちに自分たちもオリジナルの歌を歌うことになり、レコードデビューをしたのが「あなたに夢中」だった。

当時、欲しいレコードを自由に買える状況ではなかったけれど、さんざん吟味した挙句、ずいぶんあとになってこのレコードを手に入れ、文字通り擦り切れるまで聴いた。リズミカルな曲調も、彼女らのさわやかなハーモニーも、そしてもちろんキュートな3人組という彼女らの容姿も、すべてがイイナと思っていた。

当時、アイドルとしては麻丘めぐみが好きだった。……というか、麻丘めぐみさんには失礼なのだが、誰か好きな人がいないといけないような雰囲気があって、それで麻丘めぐみが好きだということにしていた、みたいなところがあった。好きは好きだったけど、別に出演するテレビを追いかけて見たり、レコードを買ったりしたわけではない。本当はキャンディーズの方が好きだった。でもキャンディーズは歌手だから、別に浮気しているわけじゃないよな、みたいな感覚もあった。

そう、当時の自分には、天地真理麻丘めぐみアグネス・チャンといった人はアイドルだけど、キャンディーズがアイドルという意識はなかったのだ。アイドルというのはあくまでソロの人だけ、と思っていたんだろうね。「わたし可愛いでしょう? わたしのこと好きになってね!」というのがアイドルなのに、三人並んで誰でもどーぞはないだろう、だからアイドルじゃない、みたいな感覚だったのかな。スクールメイツの出身で、踊りはプロであり、ただ可愛いだけのアイドルとは違う、と思っていたのかな。今から考えると、業界自体、グループアイドルというのはキャンディーズが走りだったんだと思うのだけど。

当初は周囲にあまり知っている人がいなくて、話題にできなかったが、その分、彼女たちを応援しているのは自分だけ、みたいな独占感(変な日本語)もあった。「年下の男の子」で一躍人気者になり、よくクラスの連中と一緒に歌ったり、振付を練習したりしたものだ。「春一番」のヒットで大人たちもキャンディーズの名を知るようになり、「やさしい悪魔」でアイドルを脱皮し、大物の片鱗を見せつけるようになった。

キャンディーズのシングルで出たレコードは全部持っているし(「つばさ」は知らん*1)名曲もヒット曲も多いが、僕がやはり一番思い出に残るのは、デビュー曲の「あなたに夢中」。最初に後ろを向いている三人が順に振り返るところが魅力的。ちゃんとハモっているところがスゴイ。センターはスーだ。


「愛よりもっと強い言葉 私は欲しいの/あなたにそれを告げたいの……」というフレーズは印象的だ。もしそんな言葉あるなら僕も知りたかった。

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  • 黒い雨(ときどき休みます、2011/04/21)

黒い雨は見ていないんだなあ。

田中好子とスーが一致。めでたい(笑)。

「やさしい悪魔」が好きなのはお目が高い証拠。

喪失感ありますね。当時のトップアイドルで亡くなられたのはこれが初めてではないだろうか。

*1:「つばさ」はキャンディーズが引退した後、彼女たちの意に反して販売された。伊藤蘭の作詞で、ファンに対する感謝の念を綴ったもの。