原子力発電所の今後

原子力発電に関しては世論は大きく二つに分かれているようである。ひとつは、今回の福島原発を見てもわかるように、ひとたびトラブルが起きたら人間の技術では制御できない、そもそも地震国の日本に原発を作ったのが間違いだった。このようなものはもう利用するのはやめよう、新たに建設するのはもちろん、今稼働中の原発もなくそう、とするもの。

原発をなくしてじゃあ電力利用はどうするのかというと、コンビニは24時間営業しなくてもいいじゃないか、昼間から建物の中を明るく照らす必要はないじゃないか、IH機器もいらない、みんなで節電しよう、生活レベルが落ちても命の方が大切、という意見と、火力発電を増やせばいい、太陽発電、風力発電に期待するなど、他の発電方法へシフトすればいい、という意見があるようだ。もちろん二極化しているわけではなくて、その間にさまざまなバリエーションがあるだろう。

原発推進意見も少なくないようだ。外国にエネルギー源を頼ることなく(火力の場合は石油・石炭・ガスすべて輸入することになるので、リスクが高い)、天候に左右されず(太陽発電は、曇りや夜間は使えない、風力発電は、風が吹かないと使えない)、安定的に効率よく電力を供給できるやり方というとやはり原子力ということになる。事故の原因を明確にし、二度とトラブルを起こさないよう安全性の高い原発を作りましょう、とするもの。

感情的には後者の意見には同調しにくく、新聞の投書欄などでは前者の意見をよく見るが、投書は新聞社が恣意的に選んでいるだろうから、実際の割合は不明だ。現実には後者の意見の人が、多いような気がするが、よくわからない。

単純に原発のよしあしを今ここで述べるつもりはないが、こうした話になる大前提として、電気というエネルギー資源が、原則として「移動させること」も「貯めておくこと」もできない点に大きな問題がある。

暖かくなって暖房利用が減り、計画停電は中止になった。が、夏に向かって電力不足が予想され、電力削減策が求められている。もし「貯めておくこと」ができるならば、今のうちにせっせと発電し、電力をストックしておいて、夏に備えればいい。が、数ヶ月ストックしておくことはもちろん、昼間の電力を夜間に発電することも簡単にはいかない。だから、電力供給量は使用量のピーク時に合わせなければならないのである。もし簡単に「貯めておく」ことが可能なら、こんな苦労はいらないのだ。

移動に関しては、長距離を輸送すると大きなロスが発生する、ということもさることながら、周波数が東日本は50Hzで西日本が60Hzとずれている点が問題。そのため東北電力東京電力エリアで不足する電力を関西電力が融通しようと思ってもできない(変換機が変換できる量には制約がある)。いろいろと歴史的な理由があるのだろうが、もし日本がどちらかに統一されていたとしたら、ここまで深刻な問題にはなっていなかった。

周波数は、どれだけ手間とコストがかかろうが、統一をしなければいけないだろう。さいわい、コンシューマ側の電気製品は、今は50Hzでも60Hzでも対応しているから、供給側だけの問題である。これは真っ先に実現させるべきと思う。

蓄電に関しては、さまざまな方法がなくはないが、どれも大量には貯められず、かつ、コストが高い。しかし、ここが大幅に改善されると電力問題に関してはブレイクスルーとなるので、この分野の成長に自分は期待したいし、実際、短期間で驚異的な発展があるものと考えている。

あと、これは大前研一氏が指摘していたことだが、日本は今超低成長期であり、かつ、人口は少しずつ減っていく。高度成長期のように毎年消費電力が増えていく、ということは今後はない。そして、電灯をすべてLEDに代える(消費電力は約1/10)、冷蔵庫もエアコンももっと効率のいいものに代える、そうすればさほど苦労しなくても現在の3割ほど減らせるだろうと。3割というのは原発の供給電力分ですね。