通算251勝のケンカ投法

そういえば東尾は競技者表彰で野球殿堂入りしたのだった。表彰式には「石田純一・理子夫妻もきてくれた」とあるが、和解したのか、それとも勘当はマスコミ報道だけで、実際とは違ったのか。*1

さて、本書は、恐らくは野球殿堂入りを機に、投球術について書いたものである。東尾はこれまでほとんど本を書いておらず、僕も一冊しか持っていない。頭脳派投手として、語らせたら面白い話がいくらでも出てくることは想像できるのに、あまり縁がなかったのは麻雀事件が糸を引いたものか。江夏豊山田久志が何冊も本を書いているのとは対照的である。そういう意味では、これまでの集大成として、本人自身の証言として、価値のある内容である。

もっとも、東尾の現役時代の投球術についてはこれまでいろいろ分析がされていて、その意味ではさほど目新しい内容だったわけではない。ただ、初めて彼にリーグ優勝、日本一を味あわせてくれ、MVPを取らせてくれ、勝率をぐっと高めて通算負け越しから通算勝ち越しに転換させてくれた大恩ある(はずの)広岡達郎監督に対する恨み節は笑えた。あれから30年近く経ち、本人も還暦を迎えたいい年齢になりながら、それでもここまで出てくるということは、どれだけ恨み骨髄に達していたのか。

広岡監督の東尾に対する態度が少々行き過ぎているのではないか、という点は、当時から野村克也などにたしなめられていたほどだから、本人は相当つらかったのだろう。しかし、それでもそうした気持ちを表に出さずにきちんと結果を出していたあたりが東尾らしいといえば東尾らしい。

僕は広岡も嫌いではないのだが、いったい何を考えて東尾に対してこうした態度を取っていたのか、きちんと弁明してもらいたいと思っている。

ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)

ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)

*1:娘の理子が自分と4つしか年が違わず孫もいる石田と結婚することを快く思っておらず、「結婚は許さない」「石田とは会わない」などと言っていたと一時期報じられたように記憶している。理由はどうあれ、石田純一のような男と結婚することを、女の親が嬉しく思わないのはわからなくもないが、理子だってもうさほど若くもなく、純情カレンというわけでもないだろう。そもそも東尾だって離婚歴こそないものの、派手な浮名を流した点では石田と変わらないのでは……いや同族嫌悪だったりして……などと思っていたものだ。