マートンの210安打を妨害するなよ/200安打が一気に3人

スワローズの青木が今季200安打目をホームランで飾った。タイガースのマートン、マリーンズの西岡に続いて3人目だ。シーズンに2人以上の200安打達成者が出るのは史上初だが、2人どころか一気に3人もの大台突破となった。また、青木の200安打は自身二度目で、これも史上初。

近年、200安打達成者が増えたのは、試合数が増えたせいもあるが、イチローの影響も大きいのではないか。特に青木などは、イチローを見て、よし自分も、と思っていそうだ。先日も書いたけど、これまでは3割を目指すとか首位打者を目指すとか、打率で考えるのが普通で、ヒット何本という考え方はしていなかった。打率で考えた場合、体調が悪かったり苦手な投手が出てきたりした場合は休んで打率の低下を防ぐ、というのもありだった。特に優勝争いとは関係ないチームや、優勝が決まったあとの日程消化試合では、電卓片手に、相手投手の顔を見ながら、出たり出なかったりを決めるのは当たり前だった。

安打数を目指す場合は、とにかく試合に出て打席数を増やさなければ話にならない。だから少しでも多く試合に出ることを考える。ファンにとってどちらがいいかは明らかだ。せっかく球場へ足を運んだのに、お目当ての選手が自分の記録のために勝手に試合を休んでいたら、がっかりではないか。

これまで、打率を争う選手が、特にシーズン終盤に試合を休むことが多いことに対し、ファンや一部の有識者が批判を続けてきたが、一向に改まる様子がなかった。しかし、安打数を目指すなら、最後の最後まで試合に出続けることが重要になる。もしかしたらイチローが、彼の後ろ姿で、静かに革命を起こしているのかも知れない。

さて、マートンは26日現在、203安打。残り試合数(9試合)を考えると、シーズン210安打(1994年、イチロー)の日本記録を更新する可能性も出てきた。しかし、「イチローを超える」とあまり騒ぐのはどんなものか。イチローの記録は年間130試合の中で記録されたもの。今季は144試合。試合数から単純に換算すれば、233本のヒットを打って初めてイチローを上回ったことになる。だから日本記録日本記録でよいのだが、イチローを超えたとか上回ったとかいう言い方は慎重に避けてもらいたいもの。

つまり、マートンが数字でいくら上回ったところで、イチローの記録が色褪せるわけではないということだ。くれぐれもマートンを休ませたり、敬遠したりといった、みっともない真似だけはしないでもらいたい。王貞治のシーズン55本塁打の記録をバースやらローズ、カブレラらが更新しようとした時の妨害工作は、日本プロ野球の歴史に残る恥だ。