秋来ぬと……

いつも、周囲の音に耳をそばだてているわけではない。が、こんなに夜遅く(21時とか22時とか)なっても蝉が鳴きやまないんだなあ、と思ったのはまだ数日前だったはず。そう、夜遅い時間がどうかは別にして、確かに蝉が鳴いていたのだ。

今日、22時ごろ帰宅する際、家の近所でふと気付くと虫が鳴いているではないか。この方面の知識がなく、なんという虫かはわからないが、秋の虫の音であるのは間違いない。

こんな時刻なのに、気温は一向に下がらず、少し歩いただけで汗が出、シャツが濡れる。湿度は高く、蒸し風呂のような生温かい空気が顔や手の素肌部分にまとわりつく。一向に夏が終わらないのだが、どうやらいつの間にか秋が近付いているようだ。

藤原敏行の歌をもじって言えば、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども虫の音にぞおどろかれぬる」といったところであろうか。「秋来ぬと」は「秋きぬと」と読む。「秋こぬと」と読むと秋がこないことになってしまうからね。