イーグルスのエースは岩隈だ

マーくんは、なんだかんだ言っても、しっかり勝っている印象がある。(中略)だからといって、岩隈よりも上かといわれると、僕の中ではかなり迷うところ。

なるほど、りんたろうさんは迷いますか。僕は誰が見てもエースは岩隈だと思っていた。そもそも岩隈−田中の順で投げているので、チーム内でもそういう認識なんだろうと思う。

現在、個人成績を見ると、田中は11試合で7勝3敗、防御率2.48。岩隈は11試合で4勝3敗、防御率2.57。防御率は田中がリーグ3位で岩隈が4位、勝ち星は田中が杉内(ホークス)の8勝に次いで2位。成績では田中が上回っている。が、エースと呼ばれる投手は、他チームのエースと投げ合うことが多いため、案外勝ち星には恵まれないことが多い。単純に数字だけでははかれないのだ。

田中がすごいなあと思わせてくれる投手であることは間違いないが、岩隈は、いい投球をしても勝ち星に恵まれない試合が続いていたのではなかったか。5月の成績を振り返ってみよう。カッコ内は相手チームの先発である。

  1. 1日、バファローズ木佐貫)、8回、1失点(自責点1)、奪三振7、被本塁打0、4勝目
  2. 8日、ファイターズ(ダルビッシュ)、9回無失点、同点のまま延長で勝敗つかず(チームはサヨナラ負け)。奪三振7
  3. 15日、タイガース(フォッサム)、8回3失点(自責点3)、13奪三振も味方が2点しか取れず3敗目。被本塁打1
  4. 22日、ジャイアンツ(東野)、7回1/3、3奪三振、3失点(自責点3)、被本塁打2、同点のまま降板で勝敗つかず(チームは負け)
  5. 29日、カープ(スタルツ)、9回2失点(自責点2)、同点のまま延長で勝敗つかず(チームはサヨナラ勝ち)。奪三振4、被本塁打1

5回先発して勝ったのは1日のみだが、はっきり言って、これは5連勝していて全くおかしくない成績である。相手を1点に抑えても味方が0点なら負けるのが野球だが、9回を0点に抑えてもなお勝てないとは厳しい。しかし、相手も屈指の好投手、ダルビッシュ。両雄の投げ合いでともに9回をゼロ封した試合は、ファンを沸かせ、リーグを盛り上げただろう。

一方、田中はどうか。

  1. 2日、バファローズ(伊原)、7回、1失点(自責点1)、奪三振4、被本塁打0、4勝目
  2. 9日、ファイターズ(武田勝)、6回2/3、7失点(自責点7)、奪三振4、被本塁打1、3敗目
  3. 16日、タイガース(スタンリッジ)、7回、3失点(自責点3)、奪三振10、被本塁打1、5勝目
  4. 23日、ドラゴンズ(山内)、7回1失点(自責点1)、奪三振4、被本塁打1、6勝目
  5. 30日、カープ(青木)、9回完投、2失点(自責点2)、奪三振4、被本塁打0、7勝目

4勝1敗は見事な成績である。が、相手の先発投手の顔ぶれを見ると、武田勝は一流投手かも知れないがエースではない。青木はカープの中では一番手かも知れないが、超一流かといえば「?」がつく。

開幕戦に投げ、内外にエースであることを宣言し、チーム内でも敵チームからもエースとして見られ、そうしたプレッシャーと責任感の中で投げて相応の成績を残すのがエースである。田中はエースの資質は十分にあるだろうが、今はエースではない。逆に、岩隈がエースでいる今が、タイトルを取るチャンスだ。そして、チーム内の二番手投手にタイトルを取らせてやるのも、エースの能力のうちではないかとも思うのだ。

ちなみに、岩隈の投球回は87 2/3回でリーグ1位。田中は87回で2位。彼らの責任感の表われでもあり、肩の強さの証明でもあるが、(中継ぎ・抑えが手薄であるという)チーム事情を反映しているともいえる。前監督は、時代に逆行するかのようにやたらに完投を押し付ける人だったが、メジャーの経験もある現監督になっても二人の投球回が減らないのは解せない。