円周率はいくつか(その2)

円周率を3.14とした場合は、有効数字を三桁取っていることになる。しかし、日常生活で三桁の精度を要求されることはほとんどない。たいていの場合は二桁で十分である。円周率だけ精度を高くしても、他の精度が追いつかないからだ。

たとえば半径5cmの円周は何センチか、などという問題で、5cmというのはどの程度の精度か、5.0000....cmと考えてよいのかというと、数学の場合はとりあえずそう考えて計算をするのだが、現実にそんな精度で測ったり円を描いたりはまずできない。仮に5.0cmとすれば(つまり有効数字が二桁だとすれば)、円周率だけ何桁も取って計算しても、結果の信頼性は二桁がせいぜいということになる。

だったら、3.1ではいけないのだろうか?

いけなくはないのだが、小数第2位の「4」の数字が曲者である。二桁の精度が要求される場合、3.14は3.10と3.20のほぼ中間にあって、四捨五入すれば3.1だとはいうものの、気持ち良く切り捨てにくいものがある。だから円周率の近似値として3.1という数値は使いにくい。

もし円周率が3.41...と続く数だったら、近似値として3.4が定着し、「円周率は3か3.14か?」のような議論も起きなかっただろう。計算もはるかに楽だ。偶然の産物とはいえ、神様も罪なことをしてくれたものだ。

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