昨日、なるべく更新しないと書いた舌の根も乾かぬうちに新しいエントリをアップするのも気が引けるが、書棚を整理していたら10年以上前に書いたものが発掘され、これは記録に残しておきたいと思ったので、とりあえずここに置くことにする。
オレンジソフトの忘年会で、マイクロソフトのKさんと会った。Kさんはこの時Windows NT Terminal Server Edition(以下TSE)の開発主幹をしていたため、彼にかみついたのである。日付は1998年12月25日になっているけど、忘年会自体はもう少し早かったはず。オレンジソフトの忘年会は
- オレンジソフトという会社(Adminではないけれど、2000/06/18)
TSEについては
- Windows NT Terminal Server Edition(CAEを支えるハードウエア、1999/06/08)
あたりを見ていただくとなんとなく想像がつくと思う。Alphaというのは……、そういう超高速プロセッサがあったのである。いずれにしても10年前の技術だから、知らない人がわざわざ調べるほどのものではない。
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KさんはTSEはIntel版だけあればいい、Alpha版なんか不要だと思っていたというのです。「そんな馬鹿な」と僕は言いました。
Kさん:TSEはもともとWORDやEXCELをサーバーマシンにインストールして、みんなで使うためのもの。そうすると、サーバーマシンさせそこそこ速ければ、クライアントマシンはローエンドの(古い)マシンでもストレスなく使える。リソースの有効利用が可能だ。
僕:WORDやEXCELなどはもともと一人ひとりが自分のマシンにインストールして使うものだから、そのような使い方はなじまないし、期待していない。エンジニアリング分野でこそ、長年求められていた機能だ。当然、Alphaはその筆頭だ。
Kさん:Alphaのようなマシンは、流体解析とかグラフィックスとか、非常に重たいソフトを動かすのに使うでしょう? だからCPUを占有したいじゃないですか? いくらAlphaが速いといっても、3人で使えば性能は1/3ですよ。それじゃ意味ないじゃありませんか?
僕:この世界の人は、昔からずっとUNIXを使ってきています。UNIX EWSからWindows PCへ移行した人が非常に戸惑う点、またはWindowsに移行できないでいる理由は、アプリケーションの動作の問題を別にすると、UNIXではごく当たり前にできてWindowsでは不可能なこと、すなわち、外から入って使うことと、複数の人間でシェアして使うこと、このふたつですよ。
僕:確かにAlpha/NTマシンは従来のUNIX EWSに比べれば安い。だから、EWSを一台買って三人で共有するなら、Alphaを三台買って一人一台の環境で使いましょうなんて僕なんかも言っていますけど、なんだかんだいってパソコンよりはずっと高いです。それを一人で占有できる、恵まれた環境にある人はそんなに多くありません。特に大学はそうです。出入りする学生全員分のアカウントを切ってあげなきゃいけないし、誰かがマシンを使っていたら、他の人は全く作業ができないんじゃ困ります。何人かで同時に使っても小さな計算だったら実際にはそんなに困らない。大きな計算をしたい時は、ちょっと二、三日誰も使わないでくれ、と言えばいいんです。
僕:サードパーティーから、Windowsへのリモートログインを可能にするソフトが何種類か出ていますね。VT-100のターミナルエミュレーションで、コマンドしか使えませんけど、それでもないよりましだといって、多くの人がAlpha/NTマシンと一緒に買われますよ。
僕:実は、リモートログインソフトウエアでAlphaに対応しているものって、僕の知っている限り三種類あるんですが、うちと、V社と、S社*1がそれぞれ日本の販売代理店をやっていますよ(笑)。つまり、リモートログインソフトを確保しておくことが、Alpha/NTマシンを販売する上で大事だってことです。だってうちがV社から仕入れるわけにはいきませんからね。逆もまたしかりですが。他のAlphaメーカーはどうしているんですかね。まあ今だったら、そういう場合にはLinuxにしちゃうのかも知れませんね。
僕:企業でもそうでしょうけど、特に大学や官公庁なんかは、設備で購入したパソコンは償却が済むまで処分できませんから、4年も5年も前のマシンが倉庫にごろごろしているはずです。最新のAlphaマシンを一台買って、TSEを使えば、こうした古いマシンが生き返るというなら、本当に喜ばれるでしょうね。
僕:だから、一番心配なのがファイルのセキュリティですね。普通のアプリケーションだけでなく、コンパイラを同時に実行して大丈夫なのかとか……そういった部分ですね。
Kさん:いやあ、開発環境をTSEで運用することは全く想定していませんねえ……
と、まあ、こういった話を延々としておったです。