プロ野球が殺される

個々の意見については賛成のものもあればそうでないものもあるが、いずれにしてもこうした書き手を失ったのは残念だった。

僕自身が常々感じている問題点をひとつ、挙げることにする。それは、始球式だ。

昔は始球式といえば知事だとかなんとか、「背広組」の人が行なうことが多かったと思うが、近年は他スポーツのアスリートやアイドルタレント(特に女性の)が行なうケースが多い。そのこと自体は悪いとはいわないが、「女の子だから」とマウンドよりも近くから投げたり、硬球(試合球)ではなく軟球やソフトボールを使ったり、ちゃんとした野球のユニフォーム(またはそれに準ずるスポーツウエア)ではなく、太ももを大胆にさらしたような、ショーアップされた衣装を着て行なうことが多い。

野球をバカにするのもいい加減にしてほしい、と思う。野球のルールでやるから野球の始球式になるのだ。

当然、素人が投げればマウンドに届かなかったり、とんでもないことになるのだが、それでいいのである。われわれは、改めて、総理大臣であろうが、柔道のメダリストであろうが、マウンドから時速百数十キロの球を、しかもキャッチャーの構える場所へ投げるなんてことはできない、という事実を知るわけである。それができるのはプロの野球選手のみなのだ。そういうリスペクトをもって今から始まる試合に胸を躍らせるのである。

こうした企画は、恐らくテレビ局や広告代理店などが主導で決まっていくのだろう。特に最近は、野球の人気が今ひとつだから、なんとか派手に人気を集めるようにと、彼らなりに考えているのだろう。しかし、野球に関係ないところで注目を集めても、野球ファンが増えたり、野球の試合が盛り上がったりするわけではない。むしろ、野球そのものがどんどんスポイルされてしまうだろうと思うのだ。

プロ野球が殺される (文春文庫)

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