やはり「大作」だという気はする。ジャケットを見ただけでこれまでとは違うものを感じるし、ペパー軍曹の寂しんぼクラブバンドという架空のバンドに扮してのコンサート、という趣向も気が利いている。ポールの曲で始まるのは初めてで、おやと思わせるし、全体として音が厚くなっていること、ブラスやストリングスを使いこなしていることはこれまでとかなり違う。
知識として、コンサート活動をやめていたことを知っているから、演奏に対するエネルギーをスタジオに持ち込んだんだろうとか、ステージで再現することを考慮する必要がなくなったんだろうとかいうこともわかる。レコーディングにかけた時間は400時間を超え、当時のポピュラー音楽家としては断トツに長かったのもうなずける。
ただし、力作であることは認めるが、結果が伴っているかどうかは別。いろいろなミュージシャンや音楽評論家が、本作はロック史上最高の一枚、いやロックの枠を超えて20世紀最高、などとはやし立てるが、本当にみんながそう思っているのか、そう言わざるを得ない何かがあるのか疑問。僕自身に関して言えば、率直なところ退屈なアルバムだと思っている。
あるクラシックの指揮者が「彼ら(ビートルズ)のメロディはバッハのフーガに匹敵する。少なくともモーツァルトやハイドンより上等だろう」などと言い出し、ジョージ・ハリスンが「ある日僕らは、これまでビートルズとは無関係だと思っていた人がビートルズファンであることを知った」と皮肉を漏らしたが、ビートルズの大ファンというわけではない人が、このアルバムの仕掛けに圧倒され、感心するのはわかる。しかし、ビートルズファンが、全13タイトルを聴き込んでいる人が、あえてこのアルバムを押す理由はなんだろう? 僕にはわからない。
リマスター盤は、新しい発見はなかったが、全体としてベースラインがクリアになっている。
- アーティスト: ザ・ビートルズ
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2009/09/09
- メディア: CD
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