WBCは終わりにしていい

昨日の決勝戦は、試合開始からテレビをずっと見ていたのだが、延長戦に入ってランナーが二人出てイチローに打席が回ったところでどうしても用事で外出しなければならず、席を立った。つまり一番いいところを見逃してしまったわけ。延長戦にならずに決めてくれれば、ちゃんと優勝の瞬間が見れたのに。でもまあ、勝って良かった。

最後は優勝したので、批判はとりあえず沈静化しているみたいだけど、途中途中ではあちこちのブログなどで書かれていたのは、原監督の采配はおかしい、野村や落合が監督だったらもっと楽に勝てていたんじゃないかとか、イチローが大ブレーキになっているのは明らかなのに、なぜずっとスタメン出場を続けているんだとか、なんで韓国とばっかりこんなに何度も試合をするんだとか。

現象面を見れば、まあ、それぞれ一理あるけど、そもそも監督選びが全く不明朗だったし、ついでに選手の人選も不可解なことが相次いだし、なんでそんなことになったかというと、一次ラウンドの主催が読売新聞社だったから、読売新聞の関係者しか監督の候補に上がらなくて、野村なんかが選ばれるわけもなく、ドラゴンズ(読売新聞社の最大の競合である中日新聞社が持っているチーム)の選手・監督が相次いで代表を辞退したのもその影響がゼロではなかっただろうし。

もっと元をただすと、そもそもWBCの主催はMLBMLB選手会であって、国際野球連盟IBAF)じゃない。世界各国で闘いましょうというイベントの主催を、特定の国の特定のリーグが行なうというのは明らかにフェアじゃないけど、オリンピックから野球がなくなることだし、ワールドカップのような国際大会を野球でもやりたい、という要望は、日本をはじめ多くの国で潜在的にあったもんから、うまく乗せられてしまったのだ。

オリンピックは、IOC国際オリンピック委員会)という中立の団体が主催する。FIFAワールドカップFIFA国際サッカー連盟)という中立の団体が主催するが、WBCはMLAによるMLAのための大会に過ぎない。だから、いろいろな点で歪みが生じるのは仕方のないことだ。組み合わせを変えたらフェアになるというものではない。そもそも、組み合わせにしたって、アメリカの都合のいいように仕組まれていた可能性もある(2次ラウンドで、日本、韓国、キューバが同じグループだったのは、強豪と当たるのをアメリカが避けたから?)。

アメリカが準決勝で負けたのは予定外だったかも知れないが、決勝を争った日本・韓国をはじめ、キューバを除く各国ナショナルチームの中心選手は、ほとんどがメジャーリーガー。つまり、各国の中心選手が集まって闘うのがMLBだということを宣伝するのがひとつ。メジャーリーガーではないが活躍した選手には、MLBからのスカウトの手が伸びるだろう。つまり、国際大会で活躍するレベルの高い選手の発掘が、もうひとつの目的。

日本が連続優勝したということは、日本の野球レベルが世界一だということ。つまり、日本のプロ野球が世界最高レベルなので、より高いレベルを求めてメジャーに行く必要はもうないのであって、日本シリーズの勝者が世界で一番強いチームなのだ……というようには決してならず、日本の選手にしても韓国の選手にしても、メジャー志向はますます強まるだろう。

プロリーグの市場の大きさでいうと、日本はアメリカに次いで世界第二位。だから、本来は日本にも相当な発言力があるはずだし、それだけの責任もあるはず。ところが、日本には高校野球大学野球、社会人野球、プロ野球などがバラバラで統括する組織がなく、プロとアマチュア犬猿の中でまったく意思統一がなされていない。国内で調整が取れていないのだから、国外に日本としての意見が出せるわけがない。

いろいろとWBCの改善案を出す人がいるが、MLBが主催する以上、改善にも限度がある。国際野球連盟が主催する国際大会をもっと盛り上げるのが筋なのではないかと思うが、これまでのところ、IBAFワールドカップに対してはNPB(日本プロ野球機構)は非協力的で、AAA世界野球選手権大会(16〜18歳の選手で争われる国際大会)はそもそも日本は代表チームを派遣しておらず、そのような大会が開かれているという報道すらほとんど全くなされていない。

このように、さまざまなアンフェアが取り巻いているにも関わらず、日本代表の選手はみな、高いモチベーションを保ち続け、一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮してくれたのは、素晴らしいの一語しかない。

選手のみなさん、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。