あの時の、あの判定

1969年、ジャイアンツとブレーブスとの日本シリーズで、三塁ランナーの土井がホーム突入、ブレーブス捕手岡村がタッチ、結果はアウトかに見えたが、審判のコールはセーフ。という、その後何十年にわたって繰り返し話題になる話がある。

ことの経緯は下記のダイアリに詳しい。

タイミングは、明らかにアウト。この瞬間の映像が何度も流れていたが、たしかにどう見ても土井の足はホームベースを踏んでいないように見えた。(中略)

だが、ある報道カメラマンの写真は、テレビでさえ捉えられなかった、岡村のブロックをかいくぐった土井の足がホームベースを一瞬踏んだ瞬間を、鮮明にファインダーの中にとらえていた。

翌日の新聞紙面は一転、土井の美技と球審の名ジャッジを褒め称える内容となった。

かれこれ十年くらい前、何かのテレビ番組でこの時のことが話題になり、そのシーンがリプレイされ、関係者が感想を述べ合ったことがある。この時西本幸雄氏が、依然として「あれはアウト」と主張していたのが印象的だった。

「ワシは、岡村が(土井がホームに突入したより早く)タッチしたかどうかを問題にしていたんや。それなのに、あの写真のおかげで、土井がホームを踏んだかどうかにすり替わってしまって……ホームを踏んだかどうかなんて、関係ないのに」

西本は、岡村のタッチの方が早かったという。タッチのあとでホームを踏んでも意味がない。当然ながら、写真ではどちらが先かはわからない。それなのに、また見事にホームを踏んでいる写真が撮れたため、「ホームを踏んでいるからセーフ」という説一色になってしまった、というわけだ。

アウトをセーフとされたことより、問題点がすりかわったことが、西本には、今でも悔しいらしい。もっとも、悔しがって見せたのは演出かも知れないけど。*1

*1:西本はよく、番組を盛り上げるため、意図的に、他の出演者や解説者に喧嘩を売ることがあった。