桑田真澄は一味違う

昨年11月にボーイズリーグの特別アドバイザーに就任した桑田が講演を行なった際、「育成指導の3箇条」:

  1. ヘッドスライディングの禁止
  2. ヤジの禁止
  3. 失敗していい―と指導者が選手に伝えること

を訴えたという。合理的なシステム、フェアプレイ、旧態依然とした精神論の払拭――といったところであろうか。

ヘッドスライディングといえば、確か1987年だったか、ジャイアンツの有田(前年にバファローズより移籍)がセーフティバンドを試み一塁へヘッドスライディングしたことがあった。セーフになったかアウトになったか忘れたが、こうした捨て身のプレイはこれまでのジャイアンツになかったもので、このプレイを機にチームのムードが一転。この年の優勝はこのプレイが大きかった……とのちに何度も何度もテレビで放映された。

が、見るたびに、飛び込む瞬間に失速しているのは明らかで、走り抜けた方が早いじゃないかとイライラしていたものだ。こんな草プレイが賞賛されるプロって、どんだけぇ!?(という言葉は、当時はなかったけど)結果がすべてといわれる世界で高度にプレイを磨き上げているはずのプロ野球でも、こうしたプレイがまかり通っているだ。

プロ野球選手(たとえば野村克也とか、江本孟紀とか)の書いた本を読むと、ヤジで相手選手の動揺を誘うのは当然と書かれていることが多い。内部にいるとわからないのだろうが、これを戦略と呼ぶならかなり汚い戦略だと思う。手段を選ばないプロであれば、ある程度は致し方ないとしても、あまりにも堂々と「戦略のひとつ」などと書かれることに以前から違和感を持っていた。

ミスをとがめず、伸び伸びとプレイさせた方がいい結果が出る、というのは、今年西武ライオンズの渡辺監督が実践して結果を出したが、これを肯定するのはまだまだ少数派だろう。

こうしたことを、はっきりと、声高に主張した桑田は、やはり違う、と思わされる。若い世代がどんどん変えていってもらいたい。