谷選手、優勝おめでとう

柔道の世界選手権で、最終日、谷亮子(女子48キロ級)、塚田真希(女子無差別級)、棟田康幸(男子無差別級)の三人が金メダルに輝いた。前日まで金メダルがひとつもなかったが、終わってみればメダル最多獲得となった。

谷の有言実行には恐れ入る。彼女の努力と精神力は敬意を表したい。しかし、わだかまりは消えていない。

彼女は、みんな忘れていると思うが、いわば敗者復活である。今年の4月10日の全日本選手権で谷を破って優勝したのは福見友子だった。しかし、福見は世界選手権には出場できず、負けた谷が選ばれた。実際、谷はこうして優勝し、自分を選手に選んだ人の目が節穴でないことを証明したといえるが、じゃあ福見が出場していたらどうだったであろうか。

ご存じない人も多いと思うので敢えて記すが、2002年4月、やはり全日本選手権で福見は田村亮子と対戦し、勝利している。福見ほど不幸なアスリートもいないだろう。全国大会で優勝しても、直接対決で勝利しても、谷が現役でいる間は、決して国際大会には出場できないのだ。

福見はまだ22歳と若いので、腐らず精進を続けていれば、これから活躍する機会は訪れると思うが、だからといってこうした理不尽なやり方が許されるものなのかどうか。

谷個人の責任ではないかも知れないが、自分の得た栄誉は、自分自身の努力だけでなく、こうした周囲の犠牲の上に成り立っていることはちゃんとわきまえた方がいい。僕としては、いつまでも現役にこだわらず、もう後進に道を譲ったらどうかと思う。