営業噺 その一

一応、僕も長く営業をやっているので、ちょっとノウハウを公開。

営業というのは、へりくだっても高飛車でもいけない。まずは、自分が売っているものに愛情を持ち、想いを伝えること。

まあ、それができないと話にならないし、それすらも満足にできない人が意外に多くて困る、というのもわかるけれども、これができたら営業として一人前か、というと、とんでもない、と、うちの会社の営業部の責任者であるワタシは言う。

営業の基本は顧客に愛情を持つことである。その人が少しでも喜ぶであろう情報を提供し、最終的には業務改善を実現してもらうこと。あなたがいたから私の成績が上がりました、と言ってもらうこと。それが実行できなければ、営業は務まらない。

なんだか難しい言い方だが、たとえば顧客訪問をして、30分打ち合わせをしたとする。相手の時間を30分もらったのだから、それ以上の見返りを相手に渡さなければいけない。それは、新製品情報であったり、相手の業務に対するアドバイスであったり、世間のニュースであったり、いろいろだけれども。

つまり、自分の伝えたいことを伝える時間ではなく、相手の知りたいことを提供する時間なのである。時々、挨拶に行きましたといって本当に挨拶だけして(少々の雑談をして)帰ってくる人がいるが、それはダメ。たとえ短時間でも、新しいカタログができたので持ってきましたとか、何か情報を提供することが必要だ。そうした情報を提供したりすることが、結果的に「挨拶」になるだけだ。

時には、自社で扱っていない製品の購入の相談を受けることもある。それも「関係ない」と断わってしまえば話は終わりだが、実際に導入した人を探して感想を聞いてみるくらいのことをしたら相手は喜ぶのではないか。場合によっては、競合会社の製品を薦めることもある。

競合製品を営業してどうするんだ、と思う人もいるだろう。その顧客と短い付き合いしかするつもりがなければその通りだ。しかし、長い付き合いを望み、時間をかけて最大の利益を得ようと考えるなら、相手の望むように動くのはむしろ当然だ。

その案件は他社に譲っても、相手の信頼が得られた場合、不思議なもので、代わりに、それ以上の案件が沸いてきたりするものである。最後は、お客さんが自分のもっている予算を全部投げ出して、今期のお金の使い方を相談してくるようになる。そうなったら、自分の好きなようにお金を使える(使わせられる)ではないか。

自分がそういうやり方をしているので、仮にも営業マン、営業ウーマンと名乗るなら、そこまでできて一人前といいたいけど、多分それができる人は、一握りなんだろうな。