太陽系の天体:衛星

太陽の周りをまわる天体はたくさんあって、そのうちどこまでを惑星とするかの基準が変わった、というのが今回の騒動の主旨なのだが、太陽の周りをまわっているのは9個の惑星だけじゃなかったのか? と驚いた人もいたのではないかと思う。

その通り、太陽をまわる天体は惑星の他にもたくさんある。ただし月(衛星)は、一般に「太陽の周りをまわる天体」には含めない。確かに月も太陽の周囲をまわるように運動しているのだが、地球の重力にしっかりと補足されている。地球が太陽の周りをまわっているからそれに引きずられているだけで、自ら「太陽の周り」をまわっているわけではないのだ。

従来、冥王星の第一衛星とされていたカロンが、衛星ではなく二重星だとして、冥王星と同じく惑星に認定されそうになる一幕があった。カロン冥王星は、大きさも重さもさほど差がないため、二重星という認定はわかるが、この時、衛星ではなく二重星とする理由として「カロン冥王星の周りをまわっているのではなく、互いが互いの周りをまわっている」、つまり、重心が冥王星内部ではないことを挙げる報道があった。

月も、地球(の中心)の周りをまわっているわけではなく、正確には地球と月の重心の周りを互いにまわっている。この重心は地球の内部にあるから、「月が地球の周りをまわっている」という表現でおかしいことはない。しかし、仮に月が地球からもっとはるかに離れた位置にいたら、重心が地球の外部になることもある。実際、月の軌道はこれまでかなり変化してきている。だんだん離れていって、ある日突然衛星ではなく二重星となる、というのも変な気がする。

衛星かどうかの判断は、重心の位置ではなく、大きさの比による方が自然だと思う。とはいえ冥王星以外の惑星とその衛星に関しては、大きさの比は際立っており、判断に迷うものはない。やはり冥王星だけが異質である。冥王星もそのうちのひとつとされる「カイパーベルト天体」には、こうした二重星は多いらしい。

ところで、惑星と太陽との重心が何処にあるかというと、ほとんどすべて太陽の内側にあるのだが、木星だけは太陽表面の外側にあるのだ。上記の定義(?)を流用すると、木星は惑星ではなく、太陽との二重恒星だと考えた方がいいことになる。そうすると、これまで木星の衛星だとされていた天体が惑星になる。もしカロンを惑星にしていたら、連鎖的にそうならないと筋が通らない。

まあ、そうなっていた方が面白かったかも知れないが。

参考:過去の記事