100ワットの恋人

みすらぼ日記の7月3日からのインスパイア。

人生はもっと明るく楽しくいきたいものですね。……100ワットぐらいで。

鈴木茂に「100ワットの恋人」という作品がある(作詞:松本隆、作曲:鈴木茂、「バンドワゴン」所収)。(幻の)ハックルバックの代表曲のようになってしまい、実際、演奏やアレンジメントは目を引くものがあるが、詩がおかしい。

最初にタイトルを見た時は、自分の目の前で明るく輝いてくれる比喩で「100W」と言っているのかと思った。しかし実際には逆。

You are my sunshine でもないが
君は明るい100Wの恋人さ

理想には程遠いが、まあ、自分にはこの程度の女が似合いさ、という意味で使っているのである。確かに、人生はきれいごとじゃない。そのような気分で恋人を眺めることもあろう。そういう気持ちを歌った歌があっていけないとは言わない。けれども、それは鈴木茂の芸風ではないと思うのだ。彼のアルバムを買う人が、そうした演歌を期待しているとは思えない。

はっぴいえんど解散後、立て続けに発表した鈴木茂のソロアルバムは、作詞はすべて松本隆だ。今さら30年も前の作品にケチをつけるのもなんなのだが、松本隆は今でこそ人気作詞家として押しも押されもしない地位にあるが、当時は職業作詞家としての道を歩み始めたばかり。歌い手に合わせて作品世界を変えるなどという器用な真似はできなかったのだろう。

だったら鈴木も、そこまで昔の仲間に義理立てをしなくても、自分の感性に合わせた詞を、もっと広く探しても良かったのではないか。それとも、ギタリストとしては一人前でも、歌手としては実績のない鈴木に、詞を提供してくれる人は、松本くらいしかいなかったのだろうか。